第02話、美少女のお返しは容赦ない
ササァ……と音を立てて、
俺たちはどれくらい抱き合っていただろう。もしかしたらそれは一瞬だったのかもしれない。
「ご、ごめん
「あたし、気が動転しちゃって、つい――」
いそいそと背中を向ける。「ごめんなさい、はしたなかったわね」
「いやいや」
俺は慌てた。ふさぎこむ
「すっげー怖い思いしたんだ。お互い無事を喜んで当然だろ? 俺なんとも思ってねぇから安心してくんな」
大嘘である。こんな美少女に裸で抱きつかれてなんとも思わねぇ男がいるわけない。
「ありがと。よかった、一緒に旅してたのが
「
と呪文を唱えて熱風を生み出し、着物を
無言でいると互いの鼓動まで聞こえちまいそうだと思ったとき、
「も、もし秋から
「へぇ、そうなんだ」
せっかく話題をふってもらったのに話を広げられない俺。
「そーなんだって――、
「いや俺は学園祭時期なんて休暇かと思ってたから実家に帰ってたわ」
「えぇっ!? 寄宿舎にさえいなかったの!?」
本気で驚かれてしまった。
「もぉ、信じらんない。一緒になにか企画やろうよ」
「企画って、なにをするつもりなんだ?」
試しに訊いてみただけなのだが――
「あ、学院に戻ってくれる気になったのね!」
しかたねぇ。いまの実力で魔道学院に戻って無双するってぇのも悪くねえだろう。
「全校生徒の前で魔物を倒して注目を浴びたりして。フフフ……」
ついつい妄想がふくらむ。しかし強い魔物は古代に成敗され尽くして、いまの時代じゃそうそう出てきやしねぇんだがな。
「
「なんでもねぇよ」
俺はふいっとそっぽを向くと、袖のない
「準備ができたら向こう岸まで飛んでいくぜ」
「ええ、行きましょう」
と胸の前で印を結んだ
「あんたは休んでなよ。俺が
俺は
「そんなっ、お姫さまだっこなんかしてもらわなくて平気よ!」
何を恥ずかしがってるんだか。
「この湖でかいからけっこう距離あるぜ? 回復したばっかできついだろ?」
「それ言ったら
そわそわしながらうつむく
「俺の魔力は、体力と関係なく無限なんだよ」
「そっか、やっぱり
照れ笑いしながら、
俺の太ももに
「ちゃんとつかまってろよ」
「うん」
「
「重いわけねえだろ、あんたみたいにやせっぽちな女の子が」
というのはカッコつけただけ。魔力で飛んでいるからいいようなものの、両手で彼女を
「やせっぽちじゃないもん、あたし」
「
んんっ!? いまなにした
「ちょっと
あんたのせいで集中力が乱れたんだよ!
「あ。あそこにいる船頭かしら。
「ああ、あいつだね」
俺は冷静さを取り戻し、ふたたび高度をあげた。
「
えええっ!?
「我が
「うぎゃぁぁっ、アチチチチチ!!」
ぼぉぉぉぉ――
ざぼんっ
「あたしの大切な
俺は
それは初夏のころ、ひとつの旅の終わりだった。王立魔道学院が長い夏季休暇からあけた秋、無尽蔵の魔力を得て最強となった俺は二年ぶりに復学した。
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