Root 24 八・二四の意義。


 ――それは何か? 君は知ることになる。革命前夜にも似た、その響き。



 そう。ある種の革命だったの。


 八月二十四日に誕生して、八月二十四日を心臓の鼓動が続く限り待ち侘びた少女。その生き様がこの芸術棟と、ふるさと祭りを学園に誕生させた。その発案者が、今この場にいる。誰にも触れられることはなく迷彩色のまま、そっと片隅で見守ってくれていた。


 中村なかむら美路みちさん……


 令子れいこ先生とは大親友。十四歳の誕生日を迎える前に、一度死んだ令子先生の心臓。その意思を受け継いだのが、美路さんだった。来る日も来る日も、雨の日も風の日も温かく灯し続けた芸術棟。そこに意味する令子先生の意思……それは、シンプルに皆の笑顔。


 笑顔が大好きな令子先生。

 だから彼女は、いつも満面な笑みを僕らに見せてくれる。


 それは心臓が蘇った今も……


 最先端技術による元々とは違う心臓でも、令子先生は昔のまま。五感をもって絵を描くスタイルも同じ。奇跡ともいえる再会の日のことは、今でも涙なしでは語ることのできない美路さん。……令子先生と美路さんの歴史は、この七不思議の探索により初めて知ったことだけど、同じ思いと言ったら烏滸がましいけど、それでも僕も同じ思い溢れる。


 引っ込み思案だった僕を変えるキッカケとなったのは、まさしく令子先生。


 そして自由を失いながら死を待つ病気だった僕を……

 救ってくれたのは、紛れもなく彼女との出会いだった。生きる一念も……


 彼女はその身で全部、刻んでくれた強烈に。奇跡を起こすほどの、僕の好奇心を揺り動かしてくれた。絵を描くということ。もっともっと生きたいという、その一念に。


 そして今、令子先生も僕も誕生日を迎えた。


 令子先生が三十三歳。僕が十五歳。この芸術棟で行われたパーティ。祝ってくれた縁ある人々。仕上がった作品たちが、その光景を見守っている。明日の搬入を待ち侘びて。



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