Root 02 獅子の瞳とレオ。


 ――エメラルドに輝く時、レオは登場する。



 レオとは言っても、あの赤い巨人ではなく、ほら、ちゃんと人間の男の子。こっちに向かって歩み寄ってくる……今時の、綺麗な面をした男の子。それでいて名前が怜央れお……


 名は体を表すというけど……


 そうでもなく名前負け? いやいや、人は見た目で判断してはいけないの。芸術棟で起きる七不思議の解明のため、か弱く御淑やかで、引っ込み思案なヒロインの僕を守……


 ゴチン! と重い効果音。


「痛―い!」と悲鳴。落ちた拳骨によって……だったはずだけれど、


「なんちゅう石頭なんだよ」とスリスリする拳骨の方がダメージ大。放ったのは都築つづき怜央君の方で、拳骨を受けたのは僕の方。思った以上に石頭……いやいや鋼鉄の頭アイアンヘッドのようだ。


 ――それにそれにそれに! 「誰がか弱く御淑やかで引っ込み思案だって? 芸術棟の七不思議の探索をしようって言い出したのは葉月はづきの方じゃないか。それだけじゃない。この際だから言っておくが、僕は科学で解明できないことは苦手なんだ。肝試しとかお化け屋敷とかは全然ダメ。今までは、葉月の興味本位に付き合ってきたけど、今回は……」


 と、言葉が詰まる怜央君。僕は「ダメ? 葉月のお願い聞いてくれないの?」と懸命に瞳を潤ませながら、とびっきりの甘えた声でおねだり。上目遣いも忘れずポーズも……


「あーもう! わかった、わかった。

 葉月はいつもこうだから、でも今回だけだぞ」と、怜央君は女の涙に弱い。見た目よりも男気溢れている。やはり名前通りの男の子で、獅子の風格を表現している。


 彼と僕の関係だけど、お友達で同級生の関係とか、同じ部の部員とか……きっと、それだけではないよね? 僕と同じ部の部員ということは、もちろん僕の絵を描く時のスタイルも見ているということ。全裸の僕を見ているということ……もうそういう仲なの。


 パートナーという名の、あなただよ。


 さあ、冒険を始めよう。僕と一緒に七不思議の探索へと。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る