ハヅキルートの冒険。
大創 淳
Root 01 八月のボクッ娘。
――
今は、ありのままの姿。僕は絵を描く時は、裸なの。見たものを五感で感じるから。
去年まで大きな丸い眼鏡を掛けていたけど、もういらなくなった。元々が伊達。今はもう素顔でも平気。それから髪もお下げだったけど、今はナチュラル。そして……少し丸みを帯びた身体も、それ自身が僕そのもの。引っ込み思案から放たれた自然体。
描くは水彩画でもなければ、油絵でもない……
アクリル絵。ずっと続けている。これからも、ずっと続けていく。
その舞台は学園内にある芸術棟。つまりここ。僕はこの学園の生徒で、この芸術棟の部員。中等部三年生。
この学園は中高一貫だから。それに何よりも今が一番楽しいから。
……実は、この学園の生徒になる前は、
十歳の頃に病気を患って、外の世界から隔離された長きに渡る入院と、車椅子の生活を余儀なくされていた。……命に係わるものだった。徐々に体の機能が低下するの。僕の場合は両脚から。そこで出会ったの、この大いなる奇跡に。
僕の生きている証。そのために十二歳の夏。草創期の芸術部に期間限定の部員として入部し、最期の命の炎を燃やすも悔いのない覚悟で挑んだの。……でも、土壇場になると泣いちゃうの。もっと生きたいって心が叫んだから。――だから今があるの。
手に入れた命。そして生まれ変わった、この体。
そして自由も。だから胸を張るの、裸の自分に。
今年も挑戦する。私学展に……
その中で起きる、この芸術棟の大まかに七つあると言われている不思議。ちょっとした冒険だけれど、もし君が付き合ってくれるのなら、きっと楽しい冒険だね。
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