第4話 運命の出会い()

「す、すみません。遅刻しました!」

入学式初日から大遅刻である。教室に入ると全員の視線がこちらに向かってきて、とても気まずい。


「あー!みずみずじゃん!朝ぶつかった!」

窓側から二列目の、一番後ろの席の金髪美少女が私を見て驚きの声をあげる。


「え、あいちゃん⁉︎」

まさかの同じクラス。


「えー!みずみずここの席じゃない?よろしくよろしく!やったー!」


隣の席があいちゃんだった。


「すごい、運命みたいだね…。」

窓際の一番後ろの席という、主人公席に着いてしまった私。


目の前には甲斐君がいる。やばい、入学初日からカバーなしでラノベ読んでる。

イケメンかよ。惚れた。


「わーい!みずみずと隣の席だー!嬉しみ!」

なんか、この感じ既視感があるんだよなぁ…。


「あっ!!」

思い出した!ラブない一巻56ページの入学式のシーン。


入学式に遅刻する主人公。

教室に入ると、朝ぶつかった美少女と出逢うのだ。

その女の子があいちゃんのはずなんだけど…。私がそのイベント横取りしちゃったってこと⁉︎


「待っって!もしかしてあの子あいちゃんじゃない⁉︎」

「え、マジじゃん」

「可愛い!握手してー!!」


クラスの人たちが、あいちゃんの存在に気がついたようだ。あいちゃんは、国民的アイドルだったもんなあ。


「え、えっと…。」

あいちゃんは、クラスの注目が自分に向いていることに困惑した表情を浮かべる。


ここであいちゃんが困っちゃうところまで、ラブないに忠実なのか…。

こんな時、甲斐君だったら、確かこう言ったはず!


「「やめろよ。そいつが誰だか知らないけど、困ってるだろ。」」


…ん?


「ふえあ!?」

やばい、甲斐君とセリフ被っちゃった⁉︎


「あっ、ごめんなさい…。」

甲斐君は、私と目が合うとさっと逸らしてそう言った。


急に隠キャ出てきちゃってるし!さっきのイケメン感はどうした?

まあ、そこがカッコいいんだけど!


「みずきちゃん?面白いねー!」

「あいちゃん、ごめんね。プライベートなのに急に変なこと言って…。」

「ね、あのオタク調子乗ってない?」

「みずきちゃん、どこであいちゃんに会ったの?」


クラスのみんなも私たちに好意的な態度を取り始めた。

クラスの雰囲気が良くなって嬉しいなあ。


…で、誰だ?甲斐君の悪口言ったの?

確かにラブないでも、このイベントのせいで甲斐君に友達できなかったけどね!


「あれ、もしかして君って朝に会った⁉︎」

「え、甲斐君今?今気づく?」


甲斐君とのテンプレ的な運命の出会いも果たしました。

ここから、甲斐君攻略頑張ろう!おー!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る