第2話 推しが動いてる…!

「えっ…なんで俺の名前知ってるんですか…?」

甲斐君は怪訝な顔をして私を見つめる。

その瞳の奥はなんだか自信なさげに弱々しく光っており、かわいい。


「なんでって…。その溢れ出る陰キャオーラは甲斐君しかありえないし。好きな人くらい一瞬でわかるでしょ。」


「す、スキなヒト??陰キャ…?」

甲斐君は、う~んと考え込むような仕草をするとこう言い放った。


「ま、まさか!?陰キャだから隙(があるタイプ)な人ってことだったのか…?」

これだ!と、言わんばかりの顔で私に訴えかけてくる。


「凄おおおお!?本物だぁ!!!」

まじか、甲斐君半端ない!


告られてるのにガン無視して、謎理論で自分を落としていく!

しかも、陰キャ設定のくせに初対面の女子と普通に喋れる…。


これこそ真の主人公すぎる!

ほんと、なんでネットでは評判悪いんだろ…。


「あ、まって、今日は高校の入学式だったんだ。君、大丈夫そうだからもう行くね。」


「あ、待って!甲斐君!」


私が呼び止めるのも待たずに、甲斐君は走り去ってしまった。


でも、これってもう二次元に入っちゃったってことだよね?

完全に異世界転生しちゃってるよね??


「やったぁ!これは私が甲斐君のメインヒロインになるチャンスでは?」


よく、男子は自分の推しヒロインが主人公と結ばれると喜ぶよね?

私はそれが納得できないんだ。


だって、結ばれなかったってことは私の嫁になるの確定演出ってことじゃん!


せっかく好きになった相手。

出会えたなら、この恋絶対に実らせたい!


それにしても入学式かぁ。

ということは、ここはラブないの冒頭のシーンだな。


「…入学式?」

入学式ってことは、ヒロインとの出会いがあっちゃうよね!?


あれはラブない一巻13ページ。

入学式に遅刻しそうになる甲斐君!

角で女の子にぶつかってしまい、その子と隣の席になるというテンプレイベントが起こるところ。


「これは…!」

阻止しなければ!


だってだって?

ヒロインとそもそも出会わなければ、恋も生まれないもんね?いぇい。


「甲斐くーん!待ってぇぇぇ!」

そういうと、私は甲斐君を追って走って行くのであった…。


「「痛ぁぁっ!?!?」」

走って行こうとすると、思わず角で誰かとぶつかってしまった!


「あ、ごめんなさい!大丈夫ですか?」

「私こそ、ごめんなさい…、て、え?」


思わぬ人物がそこにいて、私は目を見開いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る