私は星が好きだった。ーーー

第5話

高校に進学してから星は蕾が花開く様に容姿に磨きがかかった。

そんな星を周りが放っておく筈はなく、男女問わずいつも話題の中心となっていた。

そんな中、部活の男子部先輩から星を紹介して欲しいと声が掛かった。

最初は紹介なんてする気は全く無かった。

無かったのだが星に想い合う人が出来ればこの気持ちに決着がつくのでは？と思ってしまったのだ。

先輩は硬派で真面目な人だった。

私に紹介して欲しいと言った時も

『無理なら無理でいいんだ、断ってくれて。

ただ話すきっかけをと思っただけで、

ーーこんな厳つい大男がいきなり話掛けたら怖いだろ？』

と相手を思いやれる性格だ。

だから登校時、星にその紹介話しをした。

恥ずかしがって、ポッと頬を染めるかと思いきや星は冷え切った目をして私を見つめる。

「ーーーひなちゃんはいいの？」

そう言われドキッとした。

星の眼差しが私の中を見ている様で落ち着かない。

だが努めて冷静に、震えそうになる声を抑えて言葉を発する。

「良いも悪いも私は頼まれただけだから、星の好きにすれば良いんじゃない？」

「ーーーーそう。」

小さい声で呟いたあと私を見つめ、、、満面の笑みを浮かべた。

「うん、会ってみるね。素敵な人なんでしょ？楽しみだな！」

「ーーーえっ？」

心の片隅では星が断ると思って居た。

そんな馬鹿な私は星の言葉、表情に身体が急激に冷えて行く感覚に苛まれる。

こんな風に自分勝手に傷付くなんて本当に最低だ。

「どうしたの？ひなちゃん？」

不思議そうな顔をしなが問い掛ける星に『何でもない』と返し、ズキズキする胸を押さえ先輩の番号を渡した。

星は早速連絡を取り、今日の放課後に屋上で会う約束を取り付けていた。

その後星とどんな話をしたのかどうやって学校までたどり着いたか全く覚えて居なかった。

授業中もグルグル星の事を考えてーー

気付けば放課後、屋上の階段まで来ていた。

帰らなきゃ、と思いつつ扉の向こうの気配を探る。

すると途切れ途切れだが声が聞こえてきた。

『じゃあ、ーーー付き合ってくれないか？』

先輩の声だ。もう告白をしたのか！

目をギュッと瞑り次に発されるだろう星の言葉を激しい鼓動と共に待ち構える。

『分かりました、良いですよ。ーー私の気持ちはーーーー。』

、、、そして星は先輩の気持ちに応えた。

ーーーもう、何も考えられなかった。

扉の死角となっている壁にもたれかかりそのましゃがみ込む。

すると屋上の扉が開き先輩が階段を降りていく。

あぁ、そう言えば部活、あるよなぁ、、

そう端的に思いながら下を向いて力無く項垂れていると声が掛かった。

どうやら星に見つかってしまったらしい。気まずさは有れど逃げる気力が湧かず微かに上を向く。

「ーーひなちゃん聞いてたの？

少しマナーが悪いんじゃないかな？」

そう非難され素直に謝罪し、、、振り絞って言葉を紡ぐ。

「うん、ごめん。勝手に聞いちゃって。

勝手ついでに、言わせて。

おめでとう、これで彼氏持ちだね、うらやましぃ、、、」

笑顔を張り付け何とか最後まで言えた。

すると星の手が私の顔に伸びてくる。

そして目元を指で撫でられる。

その指には水滴が、、。自分の顔を触れば涙がとめどなく流れていた。

「ねぇ、なんで泣いているの？」

そう言われて本当の答えなんて言えない。

「うっ、嬉しくてさ！幼馴染にこっ恋人が出来たから！」

自分で言って心臓を抉られるような痛みを感じてるなんて滑稽だ。

「ーーなるほど、ちゃんと聞こえて無かったのね。

ふふっ、ひなちゃんは私に恋人が出来ると嬉しいんだぁ？」

その瞬間何かで口を塞がれた。

気付けば星の顔が目の前にあった。