第三雛
なんだか、強そうな龍の力が一部とはいえ使えるはず。
どのようなことができるのか?
「どうなの?」
「さあ?」
全く頼りにならないコウモリだな。
「ヽ(`Д´#)ノ」
騒ぐコウモリは置いといて、なにか試してみないとな。
さて……。
……。
…。
「わわわーッ!!!」
「ギャァァァっ!?」
コウモリうるさし。……というか、俺もうるさいが。コウモリよりましだろう。
というか! 今はそれどころではない! 視界が目まぐるしく変わる!
……どういう状況かというと、ちょっと、空を飛んでみた!
岩山を飛び越えーー、
深い森、そびえる大樹、樹海ーー、
草原は青く、奇岩や奇穴が続く奇景ーー、
波は荒々しく、太陽の輝きを跳ね返す大海原ーー、
一度風が吹けば舞い上がる砂で視界が〇となる砂漠ーー、
大空にはいくつかの建造物? ……船のようなものが見えたーー、
俺は今、凄い速度で空を飛んでる! というか、飛ばされてる。制御できない!
「とりあえず、止まる!」
口に出して、緊急停止を試みる。
あ、止まった。のち、落下ーー。視界が回る!
「わ、わわわー!?」
「飛べ、飛べ! 落ちてるぇぅぅ〜!」
二人でギャーギャー騒ぎながら、なんとか草原に不時着した。
少し離れたところに、岩山があるから、元の場所の近くのようだ。
「……おい。もう少し慣れるまで空は飛ぶなよ」
「……ああ、そうしよう」
飛行体験という貴重な体験は訳がわからないまま終わり、疲労感たっぷりの検証結果は、とりあえず空を飛ぶのは控えるということで一致した。
それ以外は、この世界が『魔素』のある世界で魔法が使えること。人類がいてその種族として『人間族』『魔人族』『森人族』『土人族』『獣人族』があること。魔物がいることなどをコウモリから聞くことができた。
◇◆◇
「しかし、おまえの『力』は何か探すアテはあるのか?」
「……ない」
「ないの!? ナントカレーダーみたいなやつでもないかぎり闇雲に探して何年かかるんだよ!?」
俺の単純な疑問に、コウモリは絶望を感じさせる回答をしてくる。
だが、コウモリが言うには、人の集まるところに行き、異変のある情報を収集、その中からコウモリの『力』につながる情報を吟味していく考えらしい。『力』があるところに異変あり、てか。イヤな予感しかしない。
「実は、150年経って新しい身体が目覚めれば、自然と『力』は集うはずだ。お前はそれまでにひとつでもオレの『力』を見つけてくれればいい。目覚めてからが、かなり楽になるからな。ーーこう言えば気が楽だろ?」
なるほど……。そう聞けば気は楽だが、俺がすることは大して意味のないことのようにも聞こえる。150年経てば、元通りなのか。俺が生きてる間が、イレギュラーなんだな……。
途端に、力が抜けていく感じがした。目標に向かって頑張ろうとしていたのに、目標が一気に消え失せたような。
俺はこういうときに弱い。やることや、目に見える目標がないと何をしてよいかわからず
戸惑ってしまうのだ。学校や仕事が急に休みになると、色々しようと思っっていたことをできずに終わってしまうタイプなのだ。
俺を診てくれた医院の先生も言っていたが、発達障害の特徴のひとつでもあるらしい。改善しようとしてもなかなか難しいところだと思う……。
「よしっ!」
さて、いつまでもそんなことばかりを考えていてもしょうがない。結局は何か行動に移さねば始まらないのだ。
幸いというか、俺は今半袖TシャツにGパン、スニーカーという服装である。まずは服装を整えねばならないようだ。はい、当面の早速の目標ができました。よし、そうと決まれば人里に降りてみよう!
俺は切り替えだけは早いのだ。なにせ、難しいことは考えられないのだから。
ちなみに、この難しいことが考えられないという点も俺の特質である。難しい事柄と遭遇うすると、その場で思考が停止してしまうのだ。思考が浅いと言うか単純と言うか……。
まあよし、『異世界』と『チート』の二大テンプレはクリアしたことだし、他のテンプレも回収を狙っていくか!
……あ、そう考えると段々と楽しくなってきたぞ。
ーーすぐ調子に乗る。これも俺の特質である。調子に乗りすぎてあとから後悔することしばし、であるのだが……。
まあ、今は行動あるのみ!
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