第二雛
普通に生きているだけだったーー。
底辺とまでは言えない、しかし生きているだけ。そんな人生だったか。
俺はぼんやりとそんなことを回想した。
「……ねえ、もう少し話聞いてくれない?」
コウモリに懇願される。どうやら、ひとしきり話をして落ち着いたようだ。俺の上の空にも気がついたか。
悪いが、話は聞いている。これでも。
人の話を聞いているとき、俺には途中で自分の思考に陥ってしまったり、上の空になる傾向がある。
ーー集中力がない。と片付けてしまうのは簡単だが、専門医には『発達障害の一種』と言われている。継続して経過観察やカウンセリングが必要だと言われていたが、結局のところ本人が意識するしかない、とのこと。
「事情は、わかった。邪魔して悪かった。だけど、結果的に俺の命は助かった」
「お、おう……」
「で、俺は何をすればいい?」
「え!?」
「え?」
俺がコウモリに謝り、礼を言いつつ、要望を聞く。コウモリは目を白黒させた。
文句だけ言って、先を考えていないのか。
「あ、いや、そんな言われると調子狂うな……。オレの力が十の塊になって飛び散ったから、それを集めてほしい」
と、コウモリが説明する。
繰り返しになるが、今、俺の身体は龍の新しい身体が融合されている。そのため俺は生きていられるらしい。トラックに跳ね飛ばされた(?)身体を修復したことで力を使い切った新しい龍は俺の身体の中で眠っているようだ。
そのためか、新しい龍の身体に受け継がれるはずの強い力は俺の身体に入りきれず分散した。
コウモリは、その分散した力を探して回収してほしいと言う。
「よし、いいよ。わかった」
「わかったの!? ほんとか!? 今ので本当にわかったの!?」
……自分で説明しといて、なんでその疑問形? いまいち進行が下手なコウモリだな。
「……なんか、失礼なこと考えたろ?」
「あ、いや。ところで、俺の身体の中にいる龍はいつ目覚めるわけ? 力を集めたら俺はどうなる?」
「……おそらくだが」
コウモリの見立てでは、今の俺の身体はこの世界の人間と同じ、150年の寿命がありそうで、それが尽きれば龍の身体と自我が目覚めるようだ。力をそれまでに集めれば、新しい龍の身体に入れ込むか、コウモリが回収しておくようだ。
なお、分散した力は探しやすいように球体状になっているとのこと。
色んな意味で大丈夫なんだろうか、それ……。
「それ、探しやすいように球体状って、悪意あるやつが見つけて、悪用できないの?」
「……大丈夫。たぶん」
「……」
「……だけど、早めに見つけてくれる?」
「……ああ」
まあ、なんとかなるだろう。
それより、今は自分の状況の把握に努めたい。
「ところで、俺はどれくらいのことができるんだろう?」
「ん?」
俺の疑問に、コウモリは器用に首を傾げた。
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