邪王炎殺黒龍降臨〜コミュ障及び発達障害気味、時々無双〜

@hi_ruka

第一雛

 ーー邪王炎殺黒龍

 ーーヨコシマナルオウホノオクロリュウ


 ◇◆◇


 覚醒間近の意識が、黒い羽虫のようなものを認識した。


 ブゥゥーン……


 と重低音が響く。


「……ァァァ!!!?」


 なんだか、うるさい?

 俺はボンヤリした頭で思いつつ、まだ眠いと微睡みに意識を任せようとした。


 ピシピシッ


 何かが顔に当たる。……虫とかだと嫌だな。そう思うと一瞬にして覚醒する。


「……」

「……」


 目が合う……? デカい虫!?


「わぁっ!?」

「ギャァァァ!?」


 慌てて振り払う。顔の前になんかいた!

 ーーて、悲鳴?


「……」


 振り払ったのはソフトボール大の黒い……虫? いや、これだけ大きいのは、


「太ったコウモリか!? ビックリした〜!」


 普通に怖い。なんの生き物か。俺がおっかなびっくり視線を向けると、丸い生き物がいた。


「誰が『太ったコウモリ』じゃい! ……それより、おまえのせいで! おまえのせいで!」


 丸々と太ったコウモリは叫びながら飛んで来た! 反射的に打ち返してやったね。


 ◇◆◇


 まず、状況を整理したい!

 俺は気がついたら、丸々太ったコウモリに襲われていた。以上!


「オレは、コウモリじゃねえ〜ッ!!」


 あ、やっぱ喋ってる。普通のコウモリじゃないみたい。喋る、太ったコウモリか!


「だから、オレはコウモリじゃねぇぇ〜!!」


 あ、はい。オウムみたいな喋る鳥なんかな。


「……」


 俺がコウモリを無視して周りを見渡すと、岩山にいることがわかった。室内ではなく、外だ。さっき目を覚ましたが、いきなりこんなとこにいる記憶はない。前後不覚になったが、目を覚ます前は日本にいて、普通に道を歩いていたような。トラックが近くを走っていたので、これは、そういうことなのだろう。

 ーー都市伝説。トラックの威力は異世界への門を開く。


「おい、ゴルァぁ! ひとりでウンウン納得してないで、人の話を聞けぇ〜!」


 ……コウモリ、うるさいな。

 あ、いやしかし、貴重な情報源か。話を聞こう。


「よし、聞こう」

「ヽ(`Д´#)ノ」



 ……それからギャーギャーうるさいコウモリに事情聴取したところ、このコウモリは『邪王炎殺黒龍』という強い力を持った龍で、再生のため新しい身体に生まれ変わるところだったそうだ。その途中に、どこからかボロボロで瀕死の俺が飛んできて邪魔をしたーー。

 結果、龍の新しい身体が俺に吸収され、俺は一命を取り留めた。

 龍の新しい身体に受け継がれるはずの強い力は俺の身体に入りきらなかったようで、分散されたようだ。



 つまり! 話を整理すると、


『異世界召喚(?)』

『強い力を授けられる』


 という二つの雛形ミッションをクリアしたということだな!

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