第4話「帰国日最後の投稿」

-7月22日 19時00分-

帰国🚀予定日まで📅あと一ヵ月だね🧡もうひと頑張りだよ👊日本は梅雨明け🌦してすっかり夏休みモード🌊時折外で子供👶の笑い声が聞こえます👂小学校🏫の横を通ると歓声🎶も聞こえます🥰プールいいな👙行きたいな🥰暑くて溶けそう🍨


-7月23日 0時44分-

帰国予定日、覚えていてくれたんだな!早く会いたいんだろ?実はオレもだ!来月22日は予定を開けて待っていてくれよな!




-8月12日 19時00分-

留学残り10日🔟心残りはない❓ちゃんと学べた🤓帰国の準備してるかな🚁帰りのチケットはちゃんと取ってある❓会いたいよ😍


-8月13日 0時14分-

チケットもあるし、片付けも進めている。学べるものは学んだし、こっちの人のお墨付きも貰ったぜ!この前も聞いたが、22日は空港まで来れそうか?




-8月21日 19時00分-

さぷらーいず😲めいっぱいおめかし💄しちゃった👩一年間お疲れ様でしたっ❕🧡🥰

(ウェディングドレスを着た写真)


-8月22日 3時03分-

20時25分発の飛行機でフランスを出る。日本は今真夜中か?到着は日本時間で22日の15時半頃の予定だ。会えるのが待ち遠しいぜ!返事がないが、空港まで迎えに来てくれよ?昨日のウェディングドレスで待っててもいいんだぜ!w




-8月22日 午後-


「あ、もしもし?」

「はい」

「日本に着いたぜ! 昨日の深夜にツイートしたが、見てくれた?」

「はい」

「なんだよ、よそよそしいな! 空港まで来てくれなかったのか」

「あ、いえ。空港の外、駐車場の方にいます」

「駐車場? ってお前、原付の免許しかなかっただろ。原付で来たのか?」

「車です」

「車? え、免許取ったのか!? なんだよ、何も言ってくれなかったじゃねえか」

「あ、いえ、そうではなくて」

「あ~もう、歯切れが悪いな!」

「取り敢えず、駐車場にいます。中央口まで来て下さい」

「お、おう。分かった。ちょっとトイレ行ってから向かう」

「はい」

「じゃあ後で」




「あれ? お義母さん?」

「はい、娘じゃなくてごめんなさいね」

「いえいえ! え、わざわざ迎えに来て下さったんですか?」

「はい。娘の代わりに」

「あれ? でもさっき、携帯・・・」

「娘のを預かっています」

「あ、そうなんですね? 電話の声が同じだから、全然気が付きませんでしたよ~」

「えっと、すぐに家にお戻りになる予定ですか?」

「あ~そうですね、そのつもりでしたけど。何か?」

「あの、少しだけお時間ありますか?」

「はい? ええ、まあ。家に帰っても、特別予定があるわけではないですから、大丈夫ですよ」

「では、少し連れて行きたい場所があります」

「えっ!? 何だろう。もしかして、昨日の彼女のツイートに関係がありますか?」

「昨日の、と言うと」

「彼女が送ってくれた写真です。あの、ウェディングドレスで・・・」

「あっ、あれ! 見て頂いたんですね」

「はい。もちろんですよ」

「そう。良かった。どうでしたか?」

「どうって。それはもう、綺麗でしたよ。惚れ直しちゃいました・・・ってお義母さん、何を言わせるんですか!」

「それは良かったわ。あの娘も喜びます」

「それで、彼女は今どこに? もしかしてサプライズ的な?」

「ちょっと言いづらいので・・・行きましょうか」

「あ! なるほど」




「着きましたよ」

「ここは?」

「式場です」

「えっと? ここが結婚式場?」

「結婚式?」

「サプライズで、そういう演出かなって」

「ああ・・・」

「彼女が、ここでウェディングドレスで待っていて、お帰りなさいって・・・違うんですか?」

「ごめんなさいね。何も説明しなかったから、誤解させちゃったみたいで」

「と、言いますと?」

「ここは葬式場です。娘は、この裏にいます」

「え?」

「こっちです」

「葬式場の裏って」

「彼が帰って来るまで、頑張って生きるんだって・・・でも、娘は昨年の10月5日、他界しました」

「は? だって・・・えっ? 昨年10月!?」

「そうです」

「いやいや、そんなサプライズ要りませんよ? 昨日だって彼女がツイッターで。ほら、これです。ウェディングドレスで、こんなに元気そうで」

「娘がね、黙っていてって。彼の帰国日まではって」

「嘘。冗談・・・ですよね?」

「娘は、入院してから最期の一ヵ月間、貴方のためだけに生きていました。夜、寝る間も惜しんで携帯を弄ってね。ツイッターの文面を考えていたみたい」

「そんな」

「永眠する前日、貴方の最後のツイートを見せてくれたんです。その日、娘は貴方に、写真を送って欲しいって言ったんですって? それで送られてきた写真が、ベッドに仰向けになって今にも眠りそうな表情でね」

「あの時か」

「最後のお別れが、こんな顔なのねって。彼らしいわって。そう言って笑っていたわ」

「そう・・・ですか」

「娘の墓はここです。どうか、お線香をあげて下さいな。それと、これを。手紙を預かっています。帰国したら渡すようにと。私は少し外しますから、読んであげてね」

「はい・・・有難うございます」

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