17:悪魔の噂
本校に入学して、半月ほどが経過した。
今俺たちは、全校生徒たちとともに組織編成という行事に参加している。いわゆる、部活や委員会決めだ。この学校は各大会での優勝や上位出場などの実績があり、部活を目当てとして入学するものもいる。委員会においても同様で、特に生徒会、風紀委員会は進路にも好影響を与えるほどで、中でもその会長副会長はかなりの利点がある。
「なぁ、どこ入るか決めた?」
「いやまだだな。」
隣に座っているやつが問いかけてきた。
ちなみに、委員会は全員参加だが、部活は強制ではない。
さて、突然だが、この学校には多くの美女がいるということもよく耳にする。
例えば、バスケ部のエースである
2年にして図書委員会の会長兼文芸部部長の
手芸部や茶華道部、そのた各委員会にも美女美少女がいる。
(今年の
「何考えてんの顔きめぇよ?」
だが、俺たちにとって、それ以上に憧れの的となっている存在…容貌だけでなく、大人の女性という属性をもっている…そう、三年の先輩方だ。
昨年の女子バドミントン大会にて準優勝まで上り詰めたという
そして決勝戦後に涙を流しながら互いに抱き締め合った友人、
野郎に興味はないから印象が薄い。強いて言うなら顔が生け簀かねぇくらい。だが、そのとき同席していた二人の生徒…そして俺たち新入生達にとって、一番と言える憧れの先輩が二人いる。
そう、それは…
幸舞「集会の進行を務める、生徒会長の
黄色い歓声を浴びる、生徒会長の彼女だ。
昨年の
そしてもう一人の憧れの存在は…
大きな拍手を浴びる、風紀委員長の彼女だ。
二年連続で
あの四人が同じクラスにいるとか…なんて幸せな空間…
このように、俺たちは三年の先輩たちに超憧れてる。
「なぁホントにオレいるのか?」
だが、王子様と王女様…その二人の寵愛を受けているという男子生徒がいるということを耳にしたことがある…
幸舞「勿論。」
「だとしても二人の間はおかしくねぇか?」
3年の教室に王子様のファンが向かったときに目撃したそうだ。なんでも、王子様にはあーんをしてもらったり、自身のはだけた姿を見てもらったり…それだけでなく王子様を見かける度にその生徒のところに向かっているそうだ…
蒼華「私たちの補佐なんだから、間にいなきゃね!」
「あー、まぁそっか。ってなるかぁ。」
そして、王女様はよくその生徒の名を口にしているらしい。しかも、アダ名で呼ぶ相手であるそうで、余程親しい相手なのか…実際お弁当を渡している所や一緒に登下校をしている所も見られている。
「まぁともかく。んっんー。」
これだけならまだ、まだ、まーだ許そう。生徒会長や風紀委員長という学校の秩序を守る存在である二人にそのように慕われているのなら、おそらく信頼に値するだろう。
「さぁみんな、進行補助を務めさせてもらう生徒会副会長兼、みんなのアイドル☆アオハル様だぞ。」
だが!!
その生徒は、先程挙げた〝騎士姫〟や〝詩姫〟とも随分仲が良いと聞く。それだけでなく、多くの美女と仲が良いそうだ。騎士姫と下校したり、〝詩姫〟と夜にデートをしたとかいう噂も聞いた。
「え、おい白けんな。拍手くらいしろよ。」
さらには日頃からとある生徒を抱いている(※)そうだ…曰く、その一途さを弄んでいる…その抱かれている生徒は通称〝眠り姫〟…穏やかな言動が多い可愛い生徒…その生徒が毎晩その生徒に…との噂がある。なんと邪な…!
「それじゃあ今からプリントを配布するので、進行の指示に従い記入してください。」
茶華道部に属している美女二人も毒牙にかけられているとの噂も聞く。優等生の〝
挙げ句の果てに、今年から転入してきた〝天使〟のような生徒も早々に手に掛け、手中に納めたそうだ…
神々廻先輩や雁藤先輩にも毒牙がかかっているのでは?という警告が出ている。
そんな極悪非道で下心にまみれた生徒…その悪行の数々により、生徒達からはこのように呼ばれている…
正真正銘、紛れもない悪魔…〝学園の悪魔〟と…!
そしてその生徒は一体どんな姿なのか…
「おい。紙受けとれよ。」
「え、あっ、うん。すまんすまん。」
つい考え事にのめり込んでしまった…進行補佐の男子生徒の自己紹介や進行が始まっていたようだな…
(てかなんか一瞬凄い白けてた気がするけど…まぁいっか…)
てか名前なんだったかな…あ、あお…青山?青原?うろ覚えだし、名字か名前かはっきりしないんだよな…
集会を終え、新入生は教室に戻ることとなった。だが、数名の生徒は既に委員会や部活に属しているので残ったり別のところに移動したりもする。
「……」
クソ。やはり例の〝悪魔〟が頭を過る。何人もの生徒を手に掛けるその悪魔は一体どんな生徒なのか…なんでもルックスは整っている方で、身だしなみに気を遣ったり勉強や運動も出来るというスペックらしいが…引くほどナルシストらしい。それに男女問わず誑かす…おそらく他者への配慮はなく我が強いような、身勝手なやつなのだろうか。
あぁ。あともう一人、新入生にとって憧れの大人な女性がいる。
「…!」
丁度、その女性が前方に見える。
「よしアオハル、じゃあ階段上がるぞ。平気か?」
「大丈夫大丈夫。」
一人の生徒と共に荷物を運ぶ女性教師…
大人の余裕と、時折みせる色気…体験入学や説明会で心を撃ち抜かれた生徒も何人かいるという…
その名も
その圧倒的な影響力により、入学前からも生徒達から〝女帝〟と謳われ、噂では例の悪魔にも対抗しうる存在であるという…
「てかあれ誰だよ。あの白い奴。」
どっかで見たことあんな…えーっと…あぁ、そうそう。さっきの進行補助のやつかな。
と、考えていると、その二人のもとに二名の新入生がくる。その彼女達も、新入生達の気を引く存在だ。
既に風紀委員会に属している二人。
若くして常に静かで真面目、そして優秀な
「あぁ、じゃあ道己ちゃん先生の方頼む。」
道己「だれが道己ちゃん先生だ。水治、私の上の箱持って。高波はアオハルの方持ってやれ。」
新「はい。」
水治「よいしょっ。」
「平気だから別持たなくても良いんだが…あぁ、それかめっちゃ応援してくれるとかの方が」
新「いいから早くください。」
「あ、うん。」
もし悪魔があの三人までも毒牙に掛けたら…てかあの男子生徒羨ましいな。何者だよ。
「おいあれだ…!」
隣を歩いていた生徒がそう言っている。あれ?どういうことだ?
「何が?」
「あれだよ!」
「この学校に巣くう〝悪魔〟は!」
「っ!!?」
あ、アイツが…!!あの生け簀かない顔した…アイツが!?
「ん?また人が…」
また二名の生徒が話しかける。
と、男子生徒…悪魔に言う。
「忍姫に茨姫…!」
あれが!?噂通りの美人だ…!!
「待て待ておい!眠り姫に騎士姫、詩姫…天使まで…!?」
ぞくぞくと悪魔のとこに集まってくる。
つかうるさいなコイツ。
「さっきも王女と王子のあいだに座ってたが…」
「っ!そういうことか…!」
辻褄があってしまった。なんと強欲で傲慢、いや、ある意味で暴食とも言えるだろう。感情のままに周囲をほしいままにする…
なにが悪魔だ…そんなレベルじゃない…!
あの生け簀かない顔したアオハルとかいう悪魔は…〝邪帝〟だ…!!
変態→雁藤「なにあれ。アオハルくんの出待ちかなんか?」
先輩→神々廻「多分ね。つかあんなとこで群がるなよ。10人くらいいんのにさ。」
蒼華「あ!アオくん!」
幸舞「なんだか賑やかだね。」
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