18:心理テストの話
ある日の休み時間。
アオハル「おう。」
本を片手に
静玖「目の前に黒い川があるって言われたら、どれくらい黒いって思う?」
アオハル「え急すぎない?どういう質問?」
静玖「いいから。」
アオハル「え~…」
黒い川~?環境汚染とかだろうか…いや、現日本の科学技術を使えば浄化処理は十分なはずだ。つまり黒いっていうより黒く感じる理由があるということだ…
静玖「直感で答えて。」
アオハル「直感かよ。」
静玖「うん。」
アオハル「じゃあ透き通った色。」
静玖「え、なんで?黒い川だよ?」
アオハル「いや、その川は一切黒くない。だがしかぁし!このオレという存在が美しすぎるほどに輝きまくっているから黒と錯覚しているんだな。」
静玖「…そっか……うん。」
なんとも言えない表情。どこか微笑みがあるようにも感じるが…
アオハル「で、それなに?」
静玖「これ。」
と、持っている本の表紙を見せる。
アオハル「あぁなるほど。心理テストか。」
静玖「うん。」
アオハル「どんな結果?」
静玖「『それはあなたの腹黒さ』だって。」
アオハル「かなり信憑性が高いみたいだな。」
静玖「うん…そうだね。」
またしてもなんとも言えない表情を浮かべる。
アオハル「他にもあるか?」
静玖「いろいろあるよ。図書室で借りたんだけど…1人でやるよりは何人かでやった方が楽しいかなって。すれ違ったら皆に聞こうかなって思ってて。」
アオハル「へ~。オレも一緒に聞いてっていいか。」
静玖「え、うん。いいけど…」
というわけで空野と共に校内を練り歩く。
こちらに気づき大きな声でオレたちを呼ぼうとした
アオハル「はい、こんにちは。」
静玖「ん…こんにちは。」
キリッとした表情で挨拶する高波にオレたちも返す。続けて空野は心理テストの質問をする。
静玖「『あなたに蚊が止まり、あなたは叩きました。どの部位?』」
新「はい?」
そりゃぁそうなるよな。
静玖「直感で答えて。」
新「は、はぁ……?うぅん…手の指とかですかね?」
戸惑いながらも高波は答えてくれた。
空野はオレの方を見ながら黙っている。
アオハル(あ、答えろってことか。)
だがしかしなぁ…
アオハル「オレ蚊ぁ潰さないから…」
オレの答えに対して、「あ、そっか…」と返す。
アオハル「急に悪いな高波。心理テストだよ。」
新「はぁ、なるほど…?」
アオハル「で、結果は?」
静玖「『叩いたところは貴方がコンプレックスと思っているところです。』…だって。」
二人揃ってオレの方を見る。
アオハル「まぁオレはオレの全てが大好きだからな。」
静玖「あっ、あぁ…うん。新は手らしいね…」
軽く流されたんだが。つか引かれたんだが。
高波は「手ですか?特に…」といいながら首を捻っている。まぁ心理テストって半分エンタメに近いところもあるから真に受けすぎるのもよくないが…
アオハル「あっ、そういや小学校の時に吹奏楽の指使いで悩んでなかったか?」
高波は少し驚いたような反応を見せる。
新「そういえばそう…でしたね。」
アオハル「まぁ、結構前のことだけどな。」
平然と答えるアオハルに、新は驚きや僅かな嬉しさのような感情を覚え、
静玖(…なんで覚えてるんだろう。)
静玖はまあまあ引いてた。
高波と別れ、また校内を練り歩いていた。すると
アオハル「おう。」
前方に
優愛「なんかやかましい事考えた?」
よくわかったな。やっぱオレのこと大ヤバイヤバイ苦しい。
静玖「優愛。ん~…あ、これかな。『となりにお地蔵さんが居ます。どう思った?』」
優愛「え~?なに~?ん~っと…『いっつもそうしてるけど飽きないの~…?』とか…心理テストかなんか~?」
静玖「うん。」
と、一度本を閉じて表紙をみせる。
優愛「静玖はどう思うの~?」
静玖「え。あー…『いつも静かだね』とか…」
地蔵だからなそりゃ。パリピのお地蔵さんとかいねぇのかな。めっちゃ見てみたい。
いや、夜中ハイテンションな地蔵さん見たら多分漏らすな。
静玖「ん…アオハルは?」
アオハル「そうだな…『いつもマジでありがとう。』だな。」
あぁ、ちなみにだけど、オレはめっちゃ理系だけどそういうの結構信じてるタイプ。
優愛「あ~…それで~、結果は~?」
静玖「うん…えっと……」
パラパラと流れるように開く。
すると、丁度その時放送が鳴る。
『生徒の呼び出しをします。2、3年の図書委員は、直ちに図書室に来てください。』
アオハル「あれ?空野図書委員だったよな?」
静玖「そうだね…ごめん、行かなきゃいけないから、これ預かってて。」
優愛「ん~…っとと。」
と、少し重い心理テストの本を渡される優愛。
静玖「あとで結果教えてね。」
そう一言残して、図書室へと向かっていった。
優愛「あった~…うんと~……」
結果の欄を黙読する。
アオハル「どうだった?」
そう問いかけると、姫原は「あっ、うん…」と少しぎこちないような返事をする。
アオハル「?」
優愛「えっとね~…取りあえず……多分合ってるよ~ってだけ~……」
アオハル「へ?お、おう……そう…なのか?」
なにそれ凄く気になんじゃん。教えて?
優愛「…」
優愛が見ているページに綴られていた文字。それは、特別長い文章というわけでもないが、なんだか読む気が引ける、照れくさいようなものだった。
『結果:お地蔵さんに思ったこと。それは、普段あなたが周りの人から思われていることです。静かなひと?硬い人?なんだった?』
日頃から物静かな静玖に、日頃から飽きることなくアオハルに抱きついている優愛。
優愛(…。)
なんとも言えない表情。どこか微笑みがあるようにも見受けられる。
アオハル「えっと、どうしたの?」
優愛「いや~、なんでもない~…この本、直接返す~?」
アオハル「じゃあ帰りとかだな。」
優愛「…」
いつもマジでありがとう……か。
多分、あってると思う。
今自分と腕を組みながら歩く彼は、
でも、こんな軽い言葉じゃ…これっぽっちも足りないや……
アオハル「ん?どした?」
優愛「いや、別に~…」
言い表し難い感情が体を巡る。恥ずかしさや照れ臭さ、そして悔しさもあるような…そういう諸々を押し込めるかのように、私は組んでいる腕や握る手の力を少し強くする。
アオハル「オレのこと大好きだなホント。」
優愛「…あー、そうだね。」
アオハル「えっ。」
少し動揺するような反応を見せる
もしそのまま続けて、冗談のように「はいはい、超大好き」とでも言えたのなら、少しは楽だったのかな。
どっかの王子様や彼の姉妹がスラスラと言うそんな言葉を、自分の心理を、私はまた自分の内側にねじ込んだ。
優愛(いや…多分……)
そしてまた、思いを巡らせて…
一方その頃3年教室。
神々廻「『黒い川があります。どれくらい黒い?』だって。」
問いかけるように答える彼女に続き、残り二人も答える。
幸舞「う~ん…いっそのこと漆黒とかかな。アオハルが水面にはっきり写るくらい綺麗な黒とか……」
神々廻「え、待ってアオハルくんいる前提なの?つうかマジで極端だな。」
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