10.5:外食から帰ったあとの話

 はじめまして。僕は、かなでっていいます。

 今日からオープンしたこのカフェの店長をしています。

 最近、色々とありこの町に移転してきました。別の店舗は他の人に任せ、ここにも展開していきます。


 今帰られた男女に、僕はこの二人は付き合っているのでは?と思うほど親しそうな印象を覚えました。

 はて?だが、あの白い髪の青年は…どこかで見たことがあるような…

 と、そろそろ店を閉める準備をした方がいいな。

 開店初日、なかなかよい調子だと思う。

 今日はもう閉めるが、安定してきたら営業時間を伸ばそうと思う。


 店を閉め終え、時計の針が20時過ぎを示している。

 すると、僕を呼ぶ声がする。

「お父さ~ん。ただいま~」

奏「おや、おかえり。」

 その声の主は、僕の息子…羽歌わかの声だ。

羽歌「お店、どうだった?」

奏「なかなかの調子だよ。」

 あ、そうそう。この『Café~AMMYアミィ ~』の名前は、僕らの名字、天宮あまみやのスペルから来ています。

奏「そういえば、最後に来たお客さんが面白くてね。君ら付き合ってないの?ってくらい仲がよかったんだ。」

羽歌「へぇ~!あ!あーくんたちもそうだよ!」

 楽しそうに話す息子。引っ越して来て、馴染めているか不安だったが杞憂だったようだ。

 何より、にも出会えたそうだ。その子の話をいつもしてくれる。

奏「そういえば、たぶん高校生くらいだったかな?もしかしたら、同じ学校かもね。」

羽歌「どんな人かなぁ?」


 この親子の思い浮かべる人が同じであるということに、彼ら自身が気付くのはもう少し先のお話。




 今日、友人達と食事に出掛けた。みんな中学からの付き合いだ。そしてそのうち一人は、僕の幼馴染みである彼の、実の姉にあたる。気配りができて、自信家で、感情が豊か。そして表情は、特に笑顔は彼にそっくりだ。食べ方や、些細な仕草、言葉のセンスなど、姉弟なのだということがよくわかる。友人二人も、時折その話をする。当人達に自覚はないようだが、もちろん妹さんを含め似ている。

 さて、その彼だが。僕の友人…すなわち彼の姉は彼のことを誘ったが、断られたようだ。急遽バイトが入ったとも言っていたが、理由はそれではないらしい。

 なんでも、僕にエスコートされたくないらしい。

 つい普段の癖で僕がリードしてしまうが、むしろ僕はそれもあってリードされたいと思っている。もちろん、彼にである。

 僕は学校の多くの生徒から黄色い声や視線を浴びせられ、町中でも同じく浴びせられる。

 好意なのだから、当然嬉しくはある。

 だが正直、彼とそれらはどちらが上なのかといえばもちろん彼だ。

 ファンクラブのみんなの気持ちはよくわかる。

 学校で彼に会うたび僕は幸福感を覚える。

 もし、学校で彼に不意に笑いかけられたら心底嬉しいだろう。

 もし、彼と出掛けられるなら僕が全額負担したいと思う。

 もし、彼からその誘いが来るならスマホを握りすほど力を込めガッツポーズをする。

 もし、彼が優しく僕の頭を撫でてくれたら高鳴る心臓で身体機能に異常が出る。

 ファンクラブのみんなが僕を激推ししている様に、僕も彼を激推ししている。いや、推し…ではないかな。

 当然彼の自由は尊重したいし、幼馴染みや友人たちとの関わりも大切にした。

 が、正直。叶うなら…ずっと手元に置いておきたい。人に推さず、僕一人のものにしたい。恋人や夫婦のような関係ではなくとも…

先輩「目ェやばいよー。」

幸舞ゆきま「え?そうかな?」

蒼華あおか「アオくんのこと考えてたでしょ。」

先輩「そこの変態と同系統の目だったよ。」

変態「だれが変態だ。」

変態(なんか気のせいかな。見えないなにかが変態になった気がする。)

先輩「てかそろそろ蒼華の家だね。」

 今は四人で食事をした帰りだ。僕らの家は、彼らの家を通過してから三人が別れるような道のりになっている。なので、もしかしたら彼に会える。

変態「アオハルくんも来てくれたら面白かったのにね。」

先輩「学校と違って今日は外食だから、混ざってても違和感ないだろうしね。」

変態「あの筋肉ぜっけいを堪能しながら食事とか…」

先輩「あー違った。」

幸舞「四人でも楽しいけど、彼がいたら僕はウハウハだね。」

先輩「それアンタら私らんこと見ないでしょ。」

変態「そんなことないし」

先輩「前あったんだよ。外食したとき。そのせいでアオハルくんずっと私と話してたじゃん。」

蒼華「私はこのままアオくんとイチャイチャするからね!」

先輩「待ってツッコミ追い付かないから。」

 四人での食事はもちろん楽しかった。でも彼がいたら…そう思ってしまう。今彼は何をしているだろうか。まぁ彼はだれかとデートするわけでもないだろうし…もしそんなことがあったら妬いてしまうかな。

変態「でもアオハルくん一人で食べるなら3~40分とかだよね?今もう20時過ぎてるくらいだよ?18時くらいに食事したとして…」

先輩「どんなことに思考回してんの?」

 彼女の言うことも一理ある。というか、かなりある。少なくとも外からくるのなら、外食をした。この時間に帰ってくるということはつまり……

蒼華「だれかと食べたのかな?」

変態「だね多分。」

蒼華「私のお誘い断ったのに!もう!一緒に食べたかったなぁ~」

先輩「いや断るでしょ。なんで姉と変態と王子様と先輩と食事行か…おい幸舞どこ行った。」

変態「早歩きでアオハルくんのとこ行った。」

先輩「えっ…あ、ほんとだ。もう入り口くらいまでいる。足音一切してないからアオハルくん気付いてないよね。ヤバイヤバイ、アオハルくん逃げた超逃げて。」



水治みはる「じゃネオちゃん!またね!」

ネオ「うん!…?あれ?あれって先輩と…王子様(笑)じゃない?」

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