11:ボーイッシュ幼馴染みと帰る話


 急だが。

 オレは普段、登校するとき幼馴染み達と一緒に学校に向かう。

 だが、放課後帰るときは、それぞれ委員会や部活などの理由により一緒に帰らないことが多い。なんなら一人で帰ることが多い。

 なので、誰かと一緒に帰れるときは正直かなり嬉しい。

アオハル「おいしょっと…」

 本日オレは部活も役員もバイトも休みなので、スーパーによって買い物して帰ろうかな…とか思いながら昇降口にいる。

 すると、声を掛けられる。

歩乃日ほのか「アっオハル~!」

アオハル「おー、折原おりはら。」

歩乃日「今帰り~?」

アオハル「そっ。折原も?」

歩乃日「一緒に帰ろ~!」

アオハル「いいよ~」

 朗らかな笑顔で折原はオレと腕を組む。


 歩きなれた帰り道。街灯や余裕のある歩道など、安全面で考えると学生たちの登下校に適していると思う。この辺りには神社や公園といった箇所もいくつかあり、お子様連れの方々や小学生、白装束を着た黒髪長髪の女性などがよく見られる。

 だが、オレらが小さかった頃と比べると、やけに静かに感じる。

歩乃日「な~んか、公園とかって減ってきたよね。」

アオハル「そうだな。」

歩乃日「遊具も怪我の恐れがあるから~って理由で撤去されたり、子どもが大きな声で遊ぶのもできなくなったり…」

アオハル「昔は良かったのにな。」

 ついつい面倒なおっさんみたいなことを言ってしまった。折原にも「おっさんか!」と突っ込まれた。

歩乃日「スマホとかゲームばっかで、公園は使われなくなっちゃうのかな~…」

アオハル「なんか切ないなそれ…」

歩乃日「小学校のときよく鬼ごっことかで遊んでたよね!」

アオハル「折原だけ体力やばくみんな死んでたけどな。」

歩乃日「そうだっけ~?」

 折原は小学校の頃から運動が好きで、体育の授業や運動で遊ぶときはよく無双していた。今でもそれは続いているようで、現にバスケ部ではエースとなっている。

アオハル(そういえば、これは小学校のときの話なの)

「にゃ~」

 小学校でのある話を思い出したが、鳴き声が聞こえ注意がそっちに向く。

歩乃日「ん!ねこちゃん!?」

猫「にゃ~」

アオハル「お、ほんとだ。」

 一匹のぶち猫がこちらに歩いてくる。首輪は着いていないし、爪が手入れされていない様子を見るとおそらく野良猫だろう。

猫「にゃー!」

歩乃日「かわいい~!」

 猫に駆け寄る折原。文字通り猫なで声で語りかけ、「どこからきたの~」とか、「かわいいね~」とか呟いている。「にゃ~」とねこちゃんは返すので、折原も「にゃ~」と猫の声真似をして返す。なんと癒しを感じる空間だろうか。

アオハル「ねこちゃん…いや、ねこくんだな。」

猫「にゃ?」

 折原がだっこしたので確認すると、どうやら雄のようだ。本能でかわいい人間に寄ってきたようだな、はははっ。とか思いながら眺める。

歩乃日「えへへ~、かわいい~」

アオハル「オレよく猫に懐かれるんだよな。」

歩乃日「へ~!あっ!撫でてみて~!」

アオハル「おういいぞ。いいか、猫とか動物を撫でる時は下から手をそ~っと…」

 ゆっくりとねこくんの首もとにとを近づける。普段野良の猫ちゃんがいたらこうやって撫でたりすると懐いてく

猫「フシャァァァ!!!!」

アオハル「ドゥブァッ!?!?」

歩乃日「アオハル~!!?」

 思い切り顔を引っ掛かれた。

 痛い。非常に痛い。

 そのままねこちゃんは何処かへ駆けていった。

アオハル「あのねこくんめ…よくもオレのご尊顔に…」

歩乃日「はいはい。」

 折原は慰めるようにオレの頭を撫でる。

アオハル「いつもはマジで懐かれるんだが…」

歩乃日「好みじゃなかったのかな~?」

アオハル「あ~…撫でたかったな~…」

歩乃日「あははっ、また今度だね~!」

 オレのことを撫でながら、折原はそう答える。

アオハル「…」

歩乃日「…?どしたん?」

 そっと折原の首もとに手を添え、猫を撫でるように手を動かす。

歩乃日「どわぁぁぁ!?!?!」

アオハル「痛い痛い痛いいたたたたた!!!?!」

 すると飛んでもないスピードと威力で頭をワシャワシャされる。

アオハル「いってぇな!?何すんだよ!?!?」

歩乃日「こっちの台詞!きゅ、急に顎なでないでよビックリするじゃん!?女子のこと不意打ちで撫でるとかデリカシー無さすぎ!!」

 と、さっきまでオレの頭を撫でてた女子が顔を赤くしながらなんか言ってる。なんだってんだよ…

歩乃日「い、いっつもそうだよ!さらっと女子にもスキンシップしたり!そのせいで とか(透風)ちゃん も王子様を引っかけるし、優愛ゆめちと羽歌わかっちは感覚バグるし!ほかのクラスメイトにも先輩にもやるし!だから影で『イケメン自覚してるくせにやってることのヤバさを自覚してないタイプのクソナルシスト』とか呼ばれてんだよ!!」

アオハル「待ってなにそれ知らない。」

 なんか凄い勢いで言われたから前半聞こえなかったが『クソナルシスト』って単語はしっかり聞こえた。

 折原とそうやって話していると、公園の入り口の方からなにやら迫ってくるような気配がする。そちらを向くと…

猫「フシャァァァ!!!」

 先ほどのねこくんが…

「「「「フッシャァァァァァ!!!!!」」」」

 すさまじい猫の大群を引き連れ迫ってきた。

アオハル「っわぁああーーー!!!?!?」

歩乃日「わぁぁあ!?!?」

 知らないタイプの恐怖を覚え、二人でがむしゃらに走った。


 ねこくん達は公園からは少し離れると来なくなり、オレたちは少しあるいたとこにあるベンチで一息ついている。

アオハル「ぜぇ…ぜぇ…お、オレがなにしたってんだ…」

歩乃日「ほんとに、懐かれたことある…?」

アオハル「あ、ある……」

 ホントに懐かれたことあるんだが……

歩乃日「…あれ?またねこちゃん。」

 先ほどの大群ではないねこちゃんが一匹こちらへ来る。

アオハル「…あっ。知ってるねこちゃんだ。」

ねこ「にゃ~…にゃ~ん…」

アオハル「おぉよしよし。」

 さっきとはうって変わり、アオハルに懐いてくる。

歩乃日「この子が懐いてるねこちゃん?」

アオハル「おう。他にもいるんけどな。よぉしよし…わっ…」

 膝の上に乗るねこは、前足をアオハルの胸につきながらアオハルの顔を舐める。

歩乃日「わぁ~!かわい…え、待って。」

 折原は、視線を別の方に向ける。つられてそこを見ると、10匹程度のねこちゃんがこちらに寄ってくるのが見える。

アオハル「おー、みんな来たのか。」

歩乃日「えっ、知ってる子たち?」

アオハル「そっ。ほーらよしよし。」

 なれた手付きで猫たちの相手をするアオハル。

 歩乃日も撫でようとするが…

ねこ「シャッ…!」

歩乃日「わ!?」

 と、威嚇される。引っ掛かれはしなかったものの、眼圧が凄い。

アオハル「こーら、ダメだぞ。」

ねこ「にゃっ!にゃ~…」

 アオハルに撫でられると、明らかに態度をかえる。

 歩乃日はなんとなく、見る角度を変えてねこたちを見る。どうやら全員メスのようだ。そういえば、少なくとも先ほどの猫のうち一匹は雄であった。

歩乃日「…」

アオハル「なぁ、なふはれへるだろ。」

歩乃日「あ、うん。そうだね…」

 顔を舐められまくりうまく喋れないアオハルに、猫たちの心情を理解した歩乃日は静かに返事をした。

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