5:中学校の話


 高波こうはネオ

 オレと桜寺おうじの中学の後輩であり、小学校の塾からの幼馴染みのメガネっ娘。本名は新と書いて『ネオ』と読むが、本人があまり気に入ってないらしく『さら』と呼ばせるようにしている。

 今年からオレ達と同じ高校に入学したそうで、なんでも入試一位の首席だそうだ。


 で、今その中学校のオレら三人で階段下に集まっているのだが。

アオハル「で、どうしたんだ?」

新「はい!今年も先輩のその美声で慰めて欲しいっす!」

アオハル「まっかせろぅ。オレのこの美しすぎるイケヴォを思う存分堪能させてやろう。」

新「やったっす!やったっすー!」

 ぴょんぴょんと喜ぶ高波。それを聞いた桜寺はオレにズイッと顔を寄せて

幸舞ゆきま「あっ、僕もいいかな?」

新「なっ!?だ、ダメっす!先輩の美声は私の専用配給っす!」

幸舞「はははっ、それは看過できないかな~?僕にも甘い言葉を囁いておくれよ。」

アオハル「…」

 オレは桜寺の肩に手を添えつつ、耳元ですんごく優しく、そしてめっちゃ発音よく

アオハル「Chocolate…」

幸舞「んっ…ふふ、近いね。」

新「あー!!!」

 桜寺の耳元から離れ高波の方を見て

アオハル「だーっ!やっぱ反応が悪い!」

幸舞「そうかな?じゃあ感度を研ぎ澄ますため日頃から」

新「ダメっす!ダメっすー!」

アオハル「あぁ~…」

 と、高波に引っ張られる。

新「いっつもそうっすよ!先輩はウチの栄養分なのに!」

アオハル「え、オレ吸収されんの?」

幸舞「さぁ、なんのことかな?」

新「先輩が卒業するときも!」



ーーーーー

中学校(アオハル達の卒業式日)


新「…」

アオハル「どうした?こんな所に呼び出して?」

新「先輩…え、えっと……そ、卒業おめでとうっす!」

アオハル「おう、ありがとう。」

新「そ、その!えっと…ウチの進路、先輩の行く高校と同じなんす!」

アオハル「おっ、そうなのか。高波は成績良いし大丈夫じゃないか?」

新「はいっ!が、頑張るっす!それで…」

アオハル「?」

新「必ず先輩と同じ高校に行くっす!だから、高校で会う日まで…ウチのこと忘れないでほしいっす!」

アオハル「おう…まぁ近所だし会うよ多分。」

新「それで…その…」

アオハル(お、ナチュラルにシカトされた。)

新「ウチっ!せ、先輩の第2ボタン!欲しいっす!毎日それで先輩のこと思い出して、いっぱい勉強するっす!」

アオハル「いや別会いに行くよ?ヤックルに乗って。」

新「もし高校に入学できなかったら…その時は、先輩。ウチのことなんて忘れてください。」

アオハル「いーや忘れるかぁ。大事な幼馴染みだぞ。毎日思い出すわ。」

新「うぇっ…そ、そっすかっ…えへへ…!」

アオハル「聞こえてんじゃぁないか。」

新「だ、だから!ウチに、先輩の第2ボタン、ください!」

 お辞儀をしつつ、手を此方に伸ばす高波。

アオハル「…」

新「っ……」

 オレはその手を静かにとり、此方へよせる。そして耳元で優しく伝える。

アオハル「高波の気持ちはよーくわかった。」

新「あっ…ん……じゃ、じゃあ…!」

アオハル「でもごめん。それはできない。」

新「えっ…な、なんでっすか……!」

アオハル「それは…な。」

 オレは自分の胸元をトントンと叩く。

新「え…っ!ボタン…ない…?」

アオハル「あぁ。そもそもないんだよ。」

新「な、なんでっ…だ、だれっすか!?いつ、いつの間に!真っ先に先輩に声かけたはずなのに…いつ!だれに取られたんすか!?」

アオハル「あー…えっと……そうだな。まぁ…」

新「…」

アオハル「去年からずっとない。」

新「…へ?」

アオハル「写真で確認できると思うが、今年ずっと着けてない。」

新「……え?なん、なんで…まさかなくしたんすか!?」

アオハル「いや、そういう「訳じゃないよ?」おん?あ、出たよ。学校の王子様じゃあないの。」

新「あ、あ、あぁーっ!」

 そこにいたのは、昨年卒業した幼馴染み。

 そして、オレの第2ボタンの持ち主…

幸舞「君らの幼馴染みだよ♪卒業おめでとう、アオハル♪」

アオハル「来てたんだな。まぁ、去年の卒業式に桜寺にパクられたってことだ。」

新「そんなっ…」

幸舞「ちなみに僕のボタンは彼が受け取ったよ。」

新「ぐぬぬぬぬぬ…!」

 桜寺は後ろからオレの前に手を回し、包み込むように抱きしめる。そして肩に顔を乗せて、煽るような、誘うような、涼しい表情で

幸舞「まぁ、君は来月からアオハルのいない中学校生活を過ごす。そしてその間、僕はアオハルと共にラブラブちゅっちゅな高校生活を過ごす。」

 と述べる。そんな桜寺に、「ラブラブちゅっちゅ?」とツッコむがシカトされた。この二人はオレのことすぐ無視するな。あとそこで話されるとすんごいソワソワするんだけど。

幸舞「幼馴染み同士、互いにその青春を謳歌しようじゃあないか。ネ・オ♪」

新「こんのっ…!一年間自分が我慢してたからってぇ…!」

幸舞「楽しみだね、ア・オ・ハ~…ルっ♪んっ…はぁむっ。」

新「ぬぁっ!?」

 そのままオレの耳に、口でいたずらをやり始める。

アオハル「ぁっ…んぅっ……ま、待ておい…」

幸舞「ふふっ、可愛い反応…♪」

新「うっ、うぅっ…!

  先輩達のっ、バカ~!!!」

 といって、ダッダッダッと駆け抜けていった。

幸舞「おや、酷い言われようだね。困ったな…」

アオハル「そこでしゃべるな。」

幸舞「…ふ~……」

アオハル「はひぁっ……」


ーーーーー


新「でっ!結局そのまま二人きりで帰ろうとするし!先輩も先輩で!!もう!」

アオハル「中学校かぁ…懐かしいな。」

幸舞「そうだね。まぁ僕は君以外にはあまり興味はないから、構わないけどねっ♪」

アオハル「ファンクラブ泣くぞ。」

新「無視しないでっす!」

アオハル「あぁ、悪い悪い。」

『キーンコーンカーンコーン…』

新「あっ…」

アオハル「お、そろそろ授業か。」

幸舞「もう戻らないとね。」

新「えっ!うぅ…も~!じゃあ先輩!また後でっす!」

幸舞「うん、またね。」

新「ちげーっす!」

アオハル「ん~……」

 と、オレたちはそれぞれの教室へ向かった。


新(ほんっとあの王子様(笑)!やっと先輩に会えたのに…)


アオハル『…』

新『…なんですか。』

アオハル『い~や?』

新『用がないなら、勉強の邪魔です。』

アオハル『そっか。わるいな…』

新『…』

アオハル『あー…まぁ、1つ言うなら―――』


新(先輩は、ウチのこと…褒めてくれた、認めてくれた…ちゃんと見てくれた人…)


新『…!』

アオハル『辛いときは甘えてくれて構わないさ…後輩だろ。』


新(ウチの…大事な先輩。ウチの…拠り所……先輩以外に褒められたって意味ない。ウチの…生き甲斐……!)


1年教室

クラスメイト「あ、委員長!おかえり~」

新「えぇ、はい。」

クラスメイト2「ねー委員長!委員長のネックレスってどこのやつ~?」

 クラスメイト達が問う。

新「ネックレスですか?」

自身の首にかけてあるネックレスを手に取る。糸に、一枚の四つ穴ボタンが付けられたネックレス。

新「これは…」

クラスメイト「?」

 それは、あの日。

アオハル『え…あぁ。なぁ高波、学ランのはあげられないんだが…』

 先輩にもらった、あの日のこと。提案したのが王子様(笑)ってのがちょっといやだけど…

新「これは、幼馴染み…達からの、プレゼントです。」

クラスメイト「へぇ~!いいね、それ!」

水治みはる「う~…お兄ちゃん…って、あ!さーちゃん!おかえり!」

新「水治さん、それは私の台詞ですよ…」


2年教室

アオハル「さあ同級生たち、そして愛しき幼馴染みたち!オレが帰った…どうしたあの人集り?」

 オレの席に人が集まっている。多分ファンってことかな?

アオハル「えっと~…?」

光樹みつき「っ!アオハルくん…ごめんなさい、止めたのだけれど…」

アオハル「どうゆ~…ん?オレのスマホ?」

優愛ゆめ「アオハル~…こういうの好きなの~?」

 オレのスマホの検索履歴が開示されている。そこには見に覚えのない検索履歴がズラズラと…

「逆NTR&姉妹ものだってさ…」

「うーわ…ヤバー…」

???「アオハル様の趣味…もっと知りたい…」

「あーいう趣味…え、待って月共くんて姉妹いたよね?」

 クラスの女子たちがヒソヒソ話している。

静玖しずく「別、いいし……」

歩乃日ほのか「ね~!ボーイッシュは~?」

 とグイグイくる。男子もニヤニヤしている。ふむ…オレのクラスでの評判がすごいことになりそうだ。これに限らず男子高校生の履歴はパンドラボックスのはずだ。さて、ここは…

アオハル「おいおい何だみんなオレの趣味にそんなに興味津々か?大丈夫だオレのストライクゾーンは広…おい黙って散るな。待てオレがなにしたってんだ履歴見たのそっちだろ。」

 みんな授業の準備を始めだした。

 それはそれとして、オレはそういうのはプライベートモードで見るからそれはオレの履歴じゃない。内容も考えるとこれは…

アオハル「さて…オレの姉妹はどこだああ!!!!」

 全てを察し叫んだ。

歩乃日「ねーねー!他の履歴は~?」

優愛「ん~っと…『筋肉と熱』、『過冷却』、『モノが割れる仕組み』、『エクストリーム 和訳』。」

光樹「どういう何よそれは…」

静玖「ん……」

 

3年教室

蒼華あおか「今弟が私を呼んだ…!」

先輩「授業始まるぞ受験生。」

先輩2「ぐへへ…この鎖骨のラインが一層際立たせてる…」

先輩「授業始まるぞ変態。」

幸舞「可愛い幼馴染みにも会えたし、いい思いをしたね。」

先輩「あ、ちょっと王子様~。コイツらどうにかして~」

幸舞「あぁ、いいとも。」

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