6:転校生の話


2年教室 朝のHRにて


先生「え~、進学して早々だが…転校生が来た。」

 転校生?なんだよ急に青春アオハルかよ。

先生「さあ、入ってきてくれ。」

 戸が開き、一人のジャージ姿の生徒が歩いてくる。

クラスの男子((っ!))

アオハル「…?」

「は、はじめまして」

 透き通るような、天使のような声。華奢な見た目と、優しく白い肌。

 子どものような愛らしい顔…ふわりとした雰囲気を醸す生徒…

転校生「おと高校から来ました、天宮あまみや羽歌わかです。」

 やはり、そうだ。オレはこの転校生を知っている。

羽歌「よろしくおねがいします」

 ペコリとお辞儀をする転校生。

先生「みんな、何か質問はあるか?」

「はいはい!」

 男子生徒が手を上げる。

先生「おー、なんだ。」

「彼氏はいますか~?」

 と、ド直球な質問を初手で投げ掛ける。

アオハル「…」

羽歌「えっ、か、彼氏!?いたことないかな…」

「マジか!」

「え~!?そんなに可愛いのに!?」

 というように女子生徒たちも続く。その言葉に対して、「か、可愛い…あ、ありがとう…照れちゃうな…」と呟く天宮。 

アオハル「…」

隣の席の生徒「お?なんだ、アオハル?見とれてるのか?」

アオハル「うん。」

隣の席の生徒「お?え、マジか…おい姫原ひめはらがすごい顔してこっち見てるぞ?」

 オレは先生の方を見て、手を上げる。

アオハル「はいっ。」

「おっアオハル。」

隣の席の生徒「おい待て死ぬ気か!?」

 何がだろうか。

アオハル「ん…」

羽歌「…?」

 そうオレは知っている。

 愛想笑いのような、何かを誤魔化すような笑顔を浮かべるを、オレは知っているのだ。

アオハル「え~っと、かつらぎ幼稚園のあーちゃんを知ってますか?」

 オレの言葉に、クラス中が困惑し、しばらく沈黙が流れる。

羽歌「……え?」

 オレを見る天宮の表情が、少しずつ、驚きの表情に変化し、そして笑顔にかわっていく。嬉しさが溢れているような表情だ。

羽歌「あ…あっ…あーくん…!!?」

 黒板前から小走り程度の速さで此方へ向かってくる。

 そしてそのまま加速して


羽歌「あ~く~ん!!!」


 オレの胸元に抱きつく。

「「「………は?」」」

 クラス一同が固まりそして

「「「はぁあああああ!?!?!?」」」

 と叫ぶ。あーヤバい先生の顔がキレそうだ。

アオハル「っとと……久しぶりだな、天宮あーちゃん。」

羽歌「うんっ、うん…!」

「お、おい月共つきとも!なん、なんだよ!なんでだよ!?」

「どういう関係!?」

アオハル「はぁん?決まってんだろ…」

 そう、この転校生は、同じ幼稚園で仲良しだった…オレの…!

アオハル「幼馴染みだよ。」

「「「………は?」」」

 クラス一同が固まりそして

「「「はぁあああああ!?!?!?」」」

 と叫ぶ。あーヤバい先生の顔がホントにキレそうだ。

羽歌「あーくん!あーくん!」

アオハル「本当に久しぶりだなあーちゃん…って、天宮のほうがいいか?」

羽歌「会えたっ、会えたっ!やっと会えた!」

アオハル(やっと?)

アオハル「っと、あのそろそろ離れないか?」

 どこかの後輩みたいに胸元に顔をスリスリする天宮。



ネオ「っ!」

ネオ(今先輩がウチのこと考えた!)

クラスメイト「委員長?どうかした?」

さら「いえ、お構い無く。」



アオハル「ん~…」

羽歌「ん~…って、あっ!ごめんねあーくん!い、いやだったかな…」

アオハル「いや全然?むしろ至福。」

羽歌「えっ!?もうっ!あーくんったら…」

 と話していると、後ろから姫原がオレの服を引っ張る。

優愛ゆめ「……」

羽歌「え、えっと…」

アオハル「お?なんだ姫原?もしかして妬いて「うっさい」はいっ、さーせん。」

 姫原は天宮の方をじっと見つつ、オレのことを抱きしめる。

優愛「これ私の抱き枕。」

 「え?抱き枕?」と呟くも無視された。

優愛「そういうのは私のポジション…間に合ってる……」

羽歌「え、えぇっと…」

 威嚇する姫原にアワアワしている天宮。申し訳ないが少し可愛い。

「おい月共!もう沢山女子の幼馴染みがいるのにまだ他に女子の幼馴染みか!?」

羽歌「…」

アオハル「ん~?」

 投げ掛ける問い。だがそこに訂正を1つ加える。

アオハル「あの、天宮は…」

「「?」」

優愛「ん~…」


アオハル「男子だぞ?」


「「「………」」」


羽歌「あはは……うん、ボク…男のコ、なんだ…あはは…」

 と、天宮も告げる。


「「「………は?」」」

 クラス一同が固まりそして

「「「はぁあああああ!?!?!?」」」

 と叫ぶ。

先生「…」

 あ、ヤバい先生がもういってる。

先生「ふぅ、さて、アオハル。イチャイチャの見せつけの気はすんだか?」

アオハル「え、そんなつもりじゃ…実際そうでしあー嘘です嘘です。」

優愛「…」

アオハル「え、なんだよ。待っておい。」

 姫原は静かにオレを先生の方へ差し出す。

先生「いやぁ、最近…疲れがたまっててなぁ…!」

アオハル「…いや、いや。あの…」

 そのあとの記憶はしばらくない。


羽歌「…あーくん。やっと、会えた。」


アオハル『おなまえ、なんていうの?あか?え、あーか…うー、うーあっ…ん~、言えない…』


羽歌「懐かしいなぁ…」


アオハル『あーちゃん!一緒に遊ぼ~!』


羽歌「もう、離ればなれになんてならない…」


アオハル『あーちゃん、おやくそく!つぎあうときは、あーくん、あーちゃんよりももっともっとかわいくなる!あーくん…あーちゃんといっしょにいるから、あーちゃんはかっこよくなる!』


羽歌「…ふふ。かわいくなるって、言ってたのに……」


アオハル『あーちゃんは…かっこいいんだ……あーちゃんは、かっこいいんだぞ!!おまえらぁ!オレの相棒を…わるくいうなー!』


羽歌「あの時よりもかっこよかったなぁ…ボクの大事な…幼馴染み……」

 その思いは絶えることなかった友情か、あるいは…

羽歌「あーくん…えへへ…!」

 この出会いは…偶然か……

羽歌「ふふ、ふふふ…、会えた…」

 あるいは…


 そして、この日の情報は直ぐ様拡散された。


歩乃日ほのか「ん~?何々~?」

光樹みつき「クラスに…」

静玖しずく「アオハルの…」

幸舞ゆきま「幼馴染みが……?」

新「っすか!?」

水治みはる「あれ?どっかでみたことある…」

蒼華「この子って…」


???「…あの人は……?」


 この日、彼の幼馴染みたちが終結した。

 この物語せいしゅんは今…動き出す。



先生「この日とこの日、空いてるか?」

アオハル「…」

先生「よしじゃあそうだな…9時頃には」

アオハル「おいなんも言ってないだろ。」

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