4:後輩っす!の話

 後輩。

 甘えるのが上手なキャラクター、小悪魔なキャラクター、敬語キャラクター…バリエーションはあれど、その多くは庇護欲を擽るだろう。守ってあげたい、そばにいてやらなきゃ、構ってやるか…と。

 このおれにも、年下の幼馴染みがいる。小学校の時の塾と中学校が同じ後輩で、卒業するときに第2ボタンをくださいと言われた。まぁ先約がいたから学ランのはあげられなかったんだが……


幸舞ゆきま「あ、そういえばだけど。」

アオハル「ん?」

 桜寺おうじが思い出したように問いかける。

幸舞「僕が卒業するとき渡した第2ボタンって、今どうしているのかな?」

アオハル「おぉ、よく覚えてるな。」

先輩「え、何アオハルくんもらったの!?」

アオハル「うん。」

先輩2「何々~?やっぱ寂しかったの~?」

 ニヤニヤと問いかけてくる先輩方。

アオハル「いや、卒業式のあと壁に詰められて」


幸舞『僕の第2ボタン、受け取ってくれないかい?』


アオハル「って、壁ドンされて。」

先輩「ほぼ脅しじゃん。」

アオハル「耳元やめてほしかった。」

幸舞「可愛かったよ♪」

アオハル「知ってる。」

先輩2「…」

先輩「…」

アオハル「誰も突っ込んでくれなかったってことは満場一致なんだな。で、その貰ったボタンは…」

 胸元をグイッとあけて、中を見せる。

幸舞「わぁ大胆…」

 アオハルのはだけた胸元に目が吸い寄せられる幸舞。軽く上げた顎の下には、白く張りのある健康的な肌に、鎖骨のシルエットがうっすら見え、胸筋同士の間に、浅い狭間がある。どこかいやらしい表情とポーズ、なぜか吸い付きたくなる首…

先輩「目に毒目に毒。」

アオハル「はぁ?眼福だろ。」

先輩2「……ぐへへ。」

先輩「おい。」

 その首には、レディースのネックレスのようなものが下げられている。

幸舞「これは…僕のあげたボタン?」

アオハル「そ。肌身離さずもてるようにな。」

幸舞「そうか…ありがとう…ふふっ。」

先輩「いや、普通にキモいよ?部屋に保管しなよ。」

アオハル「何でだよ。桜寺はオレのどこにしまってるんだ?」

幸舞「家宝として机の上に飾っているよ。勉強の時に精が出るんだ。」

先輩2「ね、ねぇアオハルくん?ちょっとその胸元さ?とっても良いから、写真撮ってもいいかな?多分見返せば精が出ると思うんだよね…」

先輩「えーなにヤダここ…」


 と、年相応な会話をしていると、廊下から声が聞こえる。

 アオハルの姉妹?幸舞のファン?否……


「こらそこ!風紀を乱しちゃいけません!」

アオハル「ん?」

幸舞「誰かな…って、君は…」

「一年首席!高波こうはさら!」

 今年の新一年首席、高波 新である。

 ピシッとした姿勢に、キリッとした表情。いかにも真面目な優等生という印象だ。髪も肌も健康で、整った生活や丁寧なケアが見受けられる。

新「あなたたち!3年生という自覚があるのですか!」

 ハキハキと喋りながら、スタスタとオレらの元へ歩み寄る後輩。

新「私は事前申請で既に風紀委員として登録されていますので、皆様を指導する義務があります!さぁ、月共つきとも先輩は乱れた着用を正してください!それにもう予鈴時刻になりますよ!」

 オレの腕をグイグイと引っ張り、廊下へとズルズル連れていこうとする。

アオハル「おっとと…じゃあメシ食ったし、そろそろお暇するぞ。」

幸舞「うん。またね。」

先輩「ばいばーい」

先輩2「あぁ、待って、まだ数枚しか写真撮ってないっ、しゃ、写真ん~…はっ!私は今まで…!?」

 と、挨拶する二人と我に返った先輩に手を振りつつオレは引きずられ、先輩方の教室を去っていった。


 教室から連れられたのは、人気の少ない階段の麓…ないし裏側だ。自販機があるとこ。うん。

アオハル「で、わざわざこんなとこに連れてきてまで服装指導か?」

 オレに背を向ける後輩に問う。後輩はくるりとこちらを向いて、スタスタと歩み寄り…

新「ふぅ…えへへ…せぇんぱぁい!!」

 キリッとした表情は一転、デッレデレの表情になってオレの胸元目掛け抱きつく。はだけた状態のままなので、オレの肌に彼女のスベスベの肌がスリスリつけられる。

新「えへへっ!ウチここの首席っすよ!頑張ったんすよ~」

アオハル「うん、偉い偉い。」

 デレデレに甘えてくる彼女の頭をナデナデする。

新「えへへ、誉めて誉めて~!もっともっとっすよ~!」

アオハル「ん…」

 壁ドンの姿勢になり

アオハル「よく頑張ったな…」

 耳元で優しく囁く。

アオハル「良い子だな…」

新「ふにゃあ~…」


 オレのかわいいかわいい後輩兼幼馴染み。

 小柄で明るい茶髪が目立つ美少女。元水泳部で、髪は地毛だ。

新「やっと会えたっすね!今日という日をどれ程待ち望んだか…教室にはいないし…」

アオハル「そっか、わりぃな。」

新「まったくもう!また王子様(笑)先輩に邪魔されたっす~」

アオハル「おいおい、(笑)っておい。」


「おやおや、だれが王子様(笑)だって?」

アオハル「おん?」

 上階より声が聞こえる。その声の主はもちろん先ほどまで会っていた王子様。

 階段の真下から移動し、上の階が見える場所に移動する。

幸舞「やぁ、二人とも。楽しそうだね。」

新「出たっすね!ボタン泥棒!」

幸舞「ふふ、誰のことかな?それにしても、久しぶりだね…」

新「ぐぬぬぬぬ~…!」

幸舞「ネオ♪」

新「先輩以外に呼ばれても嬉しくない!」

 こちらを見下ろす桜寺と、逆にあちらを見上げる高波。

 その二人を交互に見るオレは、とりあえず二言。そっと呟く。

アオハル「高波~、ブラ見えてる。」

新「へっ…あっ!?」

 先ほどデレデレにスキンシップをとった際に外れたようだな。

 一方で…

アオハル「桜寺はパンツ丸見えだぞ。」

幸舞「おや、そうかい?」

アオハル「うん、」

幸舞「君になら構わないさ。」

アオハル「おうそうか。」

 と言われたので、せっかくだから思いっきり見る。

新「あ、ちょっと先輩!あんなの目に毒っす!見るならこっちっす!」

 と言われたので、せっかくだから思いっきり見る。

幸舞「風紀委員が乱しに乱しているね。」

新「パンツ思いっきり見せてる〝生徒会長〟にいわれたくないっす!」

幸舞「そんなにかっかしないでおくれよ?ネオ♪」

新「だから~!」

 といいながら静かに降りてくる幸舞。


 高波こうはさら改め、本名 高波こうはネオ

 オレのかわいいかわいい中学の後輩兼、小学校の塾からの幼馴染み。

 そしてもちろん、桜寺の大事な大事な後輩兼、同中である。



 一方その頃3年の教室。


蒼華あおか「弟はどこだぁああ!!」

水治みはる「お兄ちゃんはどこですかー!!」

 勢いよくドアを開ける姉妹。

先輩「あ、もう帰ったよ。」

先輩2「うぉっほ~…なんつーいかがわしい写真…」


 2年教室


歩乃日ほのか「うわ、うぅわ…うわぁ~…!」

優愛ゆめ「ん~…え、ちょっと彼女来てるじゃん…」

静玖しずく「背徳…」

光樹みつき「貴女たちそろそろやめなさい?」

 アオハルの(偽造された)履歴に残るえっちなサイトを漁る四人。

優愛「あ、彼女さんツンデレ黒髪キャラだ。」

光樹「…まあ特に気にしていないけど、いいんじゃないかしら?そういう趣味。特に構わないけれど。」

静玖「そこは文学系のダウナーorクーデレにしてよ…別に良いけど。」

歩乃日「はぁ!?やっぱボーイッシュアスリートでしょ!特に理由はないけど!」

優愛「おうちデートは無気力系とでしょ普通~…」


???「アオハル様の…趣味…?」


クラス((なんだあの無法地帯。))


 みんな年頃の女の子なんです。


「あいつらあれが逆NTRモノって忘れてないか?」

「うっせソースぶっかけんぞ。」

「歯みがき粉貸して。」

「ん。」

「ありが…待ておい、これわさびだよな?」

 他愛もない会話をする男子たちであった。

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