3:王子様と無様な男の話


 桜寺おうじ幸舞こうま。小中学校が同じだった一個上の幼馴染み。ファンクラブができるほど人気な、イケメン王子様系の美人女子生徒である。


アオハル「冷静にファンクラブってヤバイよな。」

先輩「容姿端麗、家事が得意で、オシャレで、社交的で、気配りができて、優しく、成績優秀。」

先輩2「ファンクラブができるのが必然と言わんばかりの人柄…」

アオハル「うぅん…オレ全部揃ってるんだが…」

先輩「…」

先輩2「…」

アオハル「黙るな。」

幸舞「ずっと君の隣にいたいファンならここにいるけど?」

アオハル「どえれえファンだな。」

 と、談話しながら食事をすすめる。


幸舞「ふぅ…美味しかったかな?」

アオハル「うん。全部あ~んだったのがシャクだったけど。」

先輩「結構絵になってたよ。」

幸舞「おや、そうだったかな?」

アオハル「気の所為。」

先輩2「流石は学校の王子様って感じ。あれ?てかファンクラブの人たちはいいの?」

幸舞「よくわからないけど、微笑んで手を振ったら動かなくなったよ。」

アオハル「じゃあ先刻さっきから廊下からオレに向けられてるのは妬みや殺気さっきじゃなくて、オレへの熱い視線でいいんだな?」

先輩2「ん?お〜、ドス黒いオーラのファンクラブ…」

 廊下に目を向けると、アオハルに対して怨念を向ける、目をひん剥けた王子様こうまファンが集っていた。

ファン1「誰アイツっ…!」

ファン2「あの方の隣に男なんてっ…穢らわしい!」

ファン3「身の程を弁えなさいよっ!」

 と、ボソボソとアオハルへの憎しみを零す。

アオハル「ピースとかしたほうがいいかな。」

先輩「手の込んだ自殺ね。」

幸舞「うむ…あれは1年生かな?見たことがないファンだな…」

アオハル「そういえばだが、桜寺の2年3年のファンクラブってなんでオレに殺気向けないんだ?というかむしろ扱いが丁寧な気がするんだが…ついにオレのファンにもなったか?」

先輩2「違うでしょ」

アオハル「即答辞めて?」

幸舞「僕が、『彼はずっと側にいてほしい大切な人』って言ったからかな?」

アオハル「大切なって…まぁ幼馴染みだからな。変な誤解は招くなよ。」

幸舞「うん。だからもっと関係を解きほぐし、親睦を深めようじゃないか。」

アオハル「えー…」

先輩2「やけに幸舞には消極的だよな。」

アオハル「いやだって、桜寺と一緒にいたらオレのイケメンオーラが薄れるじゃないの。」

先輩「うぅわ。」

先輩2「無様ぁ…」

アオハル「うぅわとか無様っつーなよ。」

幸舞「大丈夫、君はいつもかっこよくて、可愛いくて、優しいよ。ずっと一緒にいたくなるくらいね。」

アオハル「ん…あそこにいるファンの方々どうにかしてから言ってほしかったな。そろそろファンたち目玉出そうだぞ。」

幸舞「あ、そうだった。少し話してくるよ。」


 といって、幸舞は廊下へ足を運んだ。


幸舞(彼は、僕の大切な人。僕を見てくれた…愛しい人。)


アオハル『たとえ嫌われようが、独りになろうが、無様になろうが…オレは大切な人を、桜寺を最後まで見捨てない。』


幸舞(君は僕の…僕にとっての王子様だよ。)


幸舞(この先も、ずっとね…)



アオハル「帰り道刺されないか心配だな…いやそれはそれで…」

先輩「ヤバいこと言ってる。」

先輩「…」


先輩(まぁ…)


アオハル『え?あー…たしかにファンからの殺意は凄いし、この前なんか脅迫文下駄箱に入ってたけど…そんな顔も知らない誰かの殺意程度で、桜寺おさななじみを蔑ろになんか出来るわけないッスよ。』


先輩2(たしかに…)


アオハル『“隣りにいてほしい”、“側にいてほしい”、“一緒にいてほしい”……面と向かってそう言ってくれる、そんな先輩の、そんな幼馴染みの幸せよりも優先することなんかないッスよ。多分。』


先輩・先輩2((大切にしたくなるかな。))


アオハル「?なんスか?」

先輩「んー?別に?」

先輩2「なんでもないよ。」

アオハル「あーもしかして?オレの良さに?とうとう気づいあー暴力は、暴力はよくない。暴力はめっぽうよくない。」


先輩はアオハルの足の上から自身の足を離し、先輩2は構えた拳を戻した。


先輩・先輩2((やっぱ気の所為かな。))

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