第3話
「超絶技巧ドライバーまさし」のドライビングテクは海の上でも冴え渡っている。
海に突っ込んだにも関わらず、軽トラは水しぶき一つたてることなくふわっと着水した。猫たちは海の上を走っていることに未だに気がついていないくらいだ。
オレはまだまだ休めない。サッと竿を振り、釣り糸を垂らす。すぐにグッとくるのでヒョイっとする。ギョギョっとカツオが釣れたので軽トラの荷台に下ろす。猫たちは大喜び。
おいおい全部食べないでくれよ。「野良猫
とかなんとか言いつつ、本当は少しも心配していない。だってオレはレジェンドオブ一本釣り。猫が食べ切るより早くどんどん一本釣っていく。
サッ、グッ、ヒョイっ、ギョギョっ。
サッ、グッ、ヒョイっ、ギョギョっ。
そう。この繰り返し。
軽トラはあっという間に猫とカツオでいっぱいになった。もはや猫とカツオで前が見えない。隙間から手を出し、なんとか竿を振る。
サッ、グッ、ググッ、グググッ…?
なんだこの感触は。とんでもない大物の予感がする。
こんなときでも慌ててはいけない。『絶対に釣り上げる』という強い意志。それさえあれば何でも釣れる。
オレを誰だと思っている。レジェンドオブ一本釣り「一本釣り太郎」ぞ。
ヒョヒョイっと釣り上げたその先に。釣り針をくわえていたのはそれは見事なシロナガスクジラ。さすがにこの荷台には収まらない。そのまま反対側へ受け流す。
軽トラの上をシロナガスクジラの大きな背中が通過した。猫たちが面白そうに見上げている。カツオたちの気持ちは分からない。
シロナガスクジラの起こした水しぶきが青空に綺麗な虹を残していった。めっちゃレインボー。仕事終わりに良い景色を見せてもらった。
気がつけば「野良猫島」の埠頭がもうそこまで近づいている。木製の桟橋には小さな白い影。それは「野良猫島」最初のお客様。いつも決まってオレの帰りを待っている忠犬のような白い忠猫。
その愛くるしい姿を見るだけで今日一日の疲れが全て吹き飛んでいく。
全てはこの世から「不幸な野良猫」をなくすため。それを達成するまで、オレは釣って釣って釣りまくる。
だってオレはレジェンドオブ一本釣り。夢さえもヒョイっと釣り上げてみせる。「一本釣り太郎」の今後の活躍を乞うご期待だ!
一本釣り太郎 イツミキトテカ @itsumiki
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