第20話

いつも優しい健ちゃんの顔が

見た事もない表情に変わった。

「自分勝手だな」

激しい口調で言われてしまった。

確かにその通りだ。

どうか嫌いになって下さい、

心の中で祈った。

私が悪いのは十分に分かってる。

円満な別れなど出来ない事も分かってる。

もし、有ちゃんに出会ってなかったら

このまま結婚まで進んでいたかもしれない。

でも、出会って恋してしまった。

もう昔には戻れない。

有ちゃんとだって、先があるのかはわからない。

でも、今の気持ちに正直でいたかった。

ズルいとは思ったが、

「さようなら」

と席を立ってしまった。

しばらく歩いて路地裏に入り、有ちゃんに

LINEした。

文字が霞んで上手く打てなかった。

夜10時近かったが、吉祥寺で呑んでるとの事。

「おいで」

と言われ、電車に乗った。

改札で待っていてくれた彼に、

健ちゃんとの経緯を話した。

「そっか。大変だったね。ごめんね」

「でも、ありがとう」

明日からの会社生活に不安はあったが

少しだけ、気持ちが楽になった。

ただの同僚として接してくれるのには

相当の時間がかかるだろう。

心の何処かで、どちらかが転属になればいいのになと願ってしまった。

次の日からの毎日は、非常に辛かった。

健ちゃんが普通に食事に誘って来る。

断っても断っても。

LINEも付き合ってた時より頻繁に来る。

辛いのは健ちゃんの方だと思うので

我慢をしているが‥





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る