第18話

日曜日が来るのが憂鬱だった。

何故なら別れを切り出す予定だから。

嫌いになって別れ話しをするのならまだ楽だ。

でも違う。

彼以上に好きになってしまった人が現れたから。

あの温厚で優しい人を裏切ってしまった。

来ないで欲しかった朝は、すぐにやって来た。

10時に待ち合わせ。

11時45分からの映画を見る予定だったので

さっそくゴハンを食べに行った。

食べながら昨夜のTVの話しなど、

たわいもない話しをした。

土曜日の事は何も聞いて来ない。

むしろ避けている様にも感じる。

映画を見てる最中も、物語りなんか

目にも頭にもまるで入って来ない。

何て言おうか、どのような反応が返ってくるか

そればかり考えていた。

見終わると、

「久しぶりにホテルで休む?」

私は何の反応も出来ず固まってしまった。

健ちゃんは悲しげな笑顔をつくり

「ごめんね。恵理ちゃんの反応を見たかったから、わざと言った」

うつむいた私は、自分が悪いのに

視界が見えないくらいの涙を流していた。

申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

「喫茶店でも行こうか」

こじんまりした昔ながらの店に入った。

無言の時間が何分も過ぎ‥

健ちゃんが口を開いた。

「恵理ちゃんが言おうとしてる事は、

 想像がつく」

「でも、俺はイヤだからね」

先手を打たれてしまった。

そんな風に言われては、ますます言えない。

下を向いたまま何分経っただろうか。

「ごめんなさい」

声を絞り出して言った。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る