第13話

退社時間が近づいて来たその時

待っていたLINE着信の音。

《返事遅くなってごめんね》

《午後、立ち続けに会議でさ》

《日曜日、会えるの楽しみにしてるよ》

《プールでも行こっか》

ニヤニヤしながら読んでる私は、少し離れた所から様子を伺っている健ちゃんの姿に、

気が付きもしなかつた。

プールか‥‥

水着姿は海で見られてるので気にしなかったが

問題はそこじゃない。

お墓参りに行ったのに、日焼けしてどうする。

健ちゃんへの言い訳だ。

でも絶対に行きたいから、日焼け止めを

しっかり塗らないと。

あ〜待ち遠しい。 

ウキウキが止まらない。

日曜日に会えないからと土曜の夜、

健ちゃんに食事に誘われた。

普段は根掘り葉掘り聞いて来ない人なのに

やたらと明日の事を聞いて来る。

 何人でいくの?

 何処にある何ていうお寺?

 何時頃帰るの?

束縛されるのが大嫌いな私は少々ウンザリ。

「親と一緒だからLINEの返事そんなに出来ないからね」

と鍵をさしてしまった。

待ちに待った日曜日、家の近所まで迎えに来てくれた。

今日は短パンにTシャツ&グラサン。

やっぱりAKIRAにしか見えない。

目的地である立川昭和記念公園のプールまで

楽しい密室。

「藤本さんって呼び方さ、やめない?」

「有一でいいよ」

えーいきなりそれは恥ずかしくて呼べない。

「じゃあさ、有ちゃんにする」

「オッケー」

完璧な恋人昇格ルートだ。


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