第12話

日曜日まで、あと5日ある。

健ちゃんからは、お買い物にでも行こうか

と誘われている。

取り敢えず

「うん。いいよ。」

とは言っておいたものの‥‥

どうしても藤本さんの事が頭をよぎる。

自分でも頭がおかしいのかと思うが

何か良い言い訳がないか必死に考えてた。

金曜日の昼、

「健ちゃんごめんね」

「今度の日曜なんだけど、家族でお母さんの

実家のお墓参りに行くことになっちゃって」

あ〜言ってしまった。

「そっか。それじゃ仕方ないね」

「行っておいで」

と優しく微笑まれた。

胸がチクチク痛かったが、それと同時に

藤本さん、まだ日曜日の予定入れてないと

いいな、と思っていた。

午後になり会社に戻るやいなやLINEした。

《日曜日なんだけど、まだ空いてる?》

3時になっても4時になっても返信が来ない。

既読にもならない。

漠然とした不安が胸を締め付けていた。

私、マジで好きになっちゃったんだ。

 何で出会っちゃったんだろう、

 何で待ち合わせて会っちゃったんだろう、

鳴らないスマホをギュッと握りしめながら

どうにもならない気持ちを抑え込もうとしていた。

確かに外見もタイプだったが、それ以上に

一緒にいると楽しい。

行動的だし、リードしてくれるし、会話も

はずむ。

健ちゃんといると、穏やかに時が流れて

心地よいのも確かなのだが。



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