第10話

食事をしながら、いろいろな話しをした。

でも、私の彼氏の事は全く聞いて来ない。

葉山で一緒にいたのは確実に見てたはずなのに。

藤本さんにとっては、どうでもいい事みたい。

食事の後はどうするのかな?

っと思っていたら

「近くに車停めてるから、ドライブ行こ」

黒いワンボックスカーからは

アップテンポの曲が流れていた。

国立インターから相模湖まで走り

ピクニックランドに入った。

「ゴーカート乗れる?」

私も好きな方なので

「うん。じゃ、競争ね」

と、満面の笑みを浮かべた。

オシャレして高いヒールを履いて来たのを

少し後悔したが、思い切りアクセルを踏み

ガンガンに飛ばした。

後ろから

「恵理ちゃん、やるねぇ〜」 の声。

楽しくてケラケラ笑いながら競いあった。

場内で暫く遊んだ後、湖に移動して

ボートに乗った。

その時、健ちゃんからのLINEが。

《お買い物、楽しんでる?》

ヤバ! 存在をすっかり忘れてた。

《うん。もう少しウロウロしたら帰るね》

《少し早いけど、おやすみなさい》

締めの言葉である、おやすみなさい、を書けば

もう連絡が来ない事をわかっていた。

オールを漕いでる藤本さんが

「彼氏から? 大丈夫?」

「うん。大丈夫だよ」

「そっか」

少しの沈黙のあと、

「よし! そろそろ帰りますか」

健ちゃんのLINEのせいで‥‥

と、何も悪くない彼を少し恨んだ。

帰りは、私の家の近所まで送ってくれ

「また連絡するからね」

と笑顔を残して帰って行った。



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