第5話

やっとの思いで到着した葉山の海は

海水浴客でいっぱいだ。

ま、自分達もその中の一人だから仕方ない。

まずは宿泊先に行き、車と荷物を預けて

海の家に向かった。

私には行きつけの海の家があった。

学生の時から葉山が大好きで毎年来ていた。

海の家も、シャワー室や食事、おばちゃん達が

お気に入りで浮気をした事がない。

健ちゃん(最近、下の名前で呼んでいる)は

葉山の海は2回目だそう。

パラソル、デッキチェアーを借り陣地完成。

さっそく、大きな浮き輪を持って

鳥肌が立つほど冷たい水に少しずつ入った。

健ちゃんはニコニコと平気な様子。

暑い寒い冷たい、本当に言わない人だ。

我慢強いのか痩せ我慢かわからないが

男らしいなぁ〜と惚れ直してしまう。

周りは家族連れやカップル達でいっぱいだ。

私達はその集団をぬってブイのある方まで行き

プカプカとまどろんだ。

浮き輪の下で足をからめたり、

突っつきあったり

ギラギラとした太陽に照らされながらも

幸せを満喫していた。

お昼ゴハンを食べようと一旦陣地に戻った時

後にいた男性3人組のうちの一人が

「やべぇ〜 足切った」の声。

振り向くと、日焼けした顔に口髭を生やした

人が足から血を流してた。

救護室に行けば処置してもらえるのにな、

と思ったが、私はバックからバンドエイドと

ティッシュ を出し渡してあげた。

「ありがと!」

と笑った顔に一瞬胸がキュンとなってしまった。

いかんいかん、健ちゃんと旅行中だった。





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