第2回目 道


カンカン照りの太陽に青空、暑さと引き換えに夏は生まれる。

熱気に揉まれながら、八坂悠人と西之谷皐月はとぼとぼと歩く。

高校から駅までの道がいつもより遠く感じる。


「今日も暑いな」


「だなー」


ぼんやりと夏休みの予定を考える。

毎日のように練習があった中学とは違い、高校の夏休みは思っている以上に自由だ。


この1か月間、何をすればいいのか分からない。

去年は友達とこれでもかってくらい思い切り遊んだ。

毎日のように遊びに行っていた。


今年もそうするつもりだったのが、どいつもこいつも浮かれて相手にならない。

気がつけば、カップルばかりだった。悠人はひとり取り残された。

隣を歩く西之谷皐月もまた、取り残された側の友達だ。


彼女をちらりと見る。半袖から伸びる腕は白魚に見えない。

脳天に鉄拳を喰らう故に、ウツボにしか見えないのである。


「ボーッとしてんじゃねえよ。頼むから倒れてくれるな」


今日も肘で小突かれた。

この学校に悪友という概念はほぼ存在しないと言っていい。

男女の友情は存在しないと、彼女ができた友人に断言されたばかりだ。


焼けるような暑さのせいで頭がやられているのだろう。

浮ついたことしか言わない友達を早々に見限った。


「夏休みは何してるんだ?」


「バイト以外予定はない。冷やかすなら来なくていいからな」


「いや、そういうことじゃなくて……」


学生にとって夏休みは稼ぎ時ではある。

きっちり働けば、それなりの稼ぎにはなるだろう。


「なあ、宿題は一緒にやんないか。ウチだとやる気が出ない」


彼女の家は荒れているらしく、集中できる環境ではない。

学校にもあまり来ていなかった。

悠人はゲームをやりすぎたせいで勉強に追いつけなくなった。

これに関しては何を言われても仕方がない。


どうにかして赤点を免れた仲間だ。大事にしなければならない。


「そんなら明日から図書館行くか」


「何でだよ」


「面倒なことはさっさと終わらせたほうが楽じゃん?」


最後までため込む理由もない。楽しく遊んで終わりたいだけだ。

何も言い返せないのか、頭を抱えて何やらつぶやいている。


「宿題がぜんぶ終わったら、どっか行くか?」


「何だよそれ」


「フツーに勉強してもおもしろくないだろ」


「まあ、どいつもこいつも浮かれてやがるしな」


「ほんとそれ。浮かれポンチの裏切り者しかいねえ」


取り残された二人は肩をすくめた。

夏休みは始まってすらいないのである。

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