秘め事

 エセルナート王国王女アナスタシアとその直属護衛女騎士カレン、そしてガランダリシャ王国連合の王女イルマ=ディーダリシャは連合首都ガランダルの王宮で身体を重ねた。


 晩餐会を終え、化粧を落とし平服に着替えてイルマ王女の先導で寝室に戻る。


 イルマは傍目にも分かる程緊張していた。


 部屋に入り、侍女たちを下がらせる。


 窓から入る月明りに照らされたイルマは期待と不安に満ちた目でアナスタシアとカレンを見つめた――だが直ぐに視線を下に逸らしてしまう。


 イルマの褐色の肌と、アナスタシアとカレンの白い肌が対照的だ。


 服の上からでも女性の線が感じられイルマは増々縮こまってしまった。


 アナスタシアは華奢だが身体は女性らしい丸みを帯び胸もしっかりと有った。


 スレンダーかつ見事な肉体のカレンとも比べて自分は女らしくないと気後れしてしまう。


 その分二人の肉体が眩しくて直視出来なかった。


 年齢を考えれば無理もない事なのに自分が彼女達に相応しくない人間に思えて仕方なかった。


 少しの沈黙の後、意を決してアナスタシアがイルマとカレンの手を取って大きな寝台に向かう。


 服を脱いでイルマを真ん中に三人は横になった。


 暫くの間三人は何も喋らなかった――イルマはただ心臓の鼓動が早鐘を打ったかのように脈打つのを悟られまいと精一杯胸を押さえていた。


 お互いの身体が軽く触れあう度にイルマは体を震わせる。


「本当はいけない事ですよね――女同士なんて」イルマはアナスタシアとカレンを貶めるつもりは無かったのだ――だがカレンがイルマの首筋に唇を這わせる。


「何がいけないの――私と姫様の関係を否定するつもり?」嫉妬か怒りか、その声には冷たさが有った。


 恐怖と羞恥で動けないイルマをカレンの手が嬲り始める――最初は腰や鎖骨をくすぐる様な責めだったのが次第に乳房や股間近くにまで手が伸びる――だが、肝心な所を決して触らない。


「――あっ、あ、ああ……っ」イルマがもどかし気な嬌声を上げ始めた。


「ずるいわ――カレンばっかり」アナスタシアもイルマの身体を弄ぶ。


 二人共イルマの反応を見ながら、しかし焦らす事しかしてくれない。


「イルマ王女、貴女――こういう事は初めてですわね。自分で慰めた事も殆ど無いのではありません?」アナスタシアが指摘した。


 イルマは応える代わりに首をそっと小さく縦に振った――知識だけは人並みに有ったのだが、恥ずかしさと怖さで今迄一回も行動に移せなかったのだ。


「優しく――して下さい――」それだけ言うのが精一杯だった。


「優しくなんてしません」カレンがイルマの控え目な乳房を掴んだ。


「ひっ――」痺れるような痛みと快感にイルマはのけ反った。


「いやらしいイルマ王女様――本当は苛めて欲しいんでしょう」カレンが意地悪な笑みを見せつける。


「――そんな――」イルマは自分を慰めた事さえなかった――知られると恥ずかしい、何故かそう思ってしまう。


 じんじんと胸から快感が広がっていく――下腹の奥が熱を持ってくるのをイルマは自覚した。


 背後からアナスタシアが、前からカレンがイルマの身体を弄ぶ。


「――怖い――です……カレン様……アナスタシア様――」それまでも死ぬ様な恥辱を感じていたが快感だけでなく恐怖に近い感情がイルマを翻弄していた。


 底知れない怖さが襲ってくる――このままいったらどうなってしまうのだろう。


「あ……ヤメ……い…ぃ――」身体中を電気が走った様な快楽が襲ってくる。


 イルマはこのまま快感に身を任せてしまいたい衝動に捕らわれた。


 それを見透かしたかの様に胸の頂をカレンが、秘所をアナスタシアが辱めてきた。


「駄目――これ以上は!」イルマは怯えて身を起こすと寝台から逃げ出してしまった。


「誘ってきたのは貴女でしょう――イルマ王女様」カレンが不平を言った。


「でも――」イルマ王女は体を震わせる


「カレン、無理強いは出来ないわ。私達は力尽くで相手をモノにする男とは違う。イルマ様、今日の所はこれで。気が変わったらまたいらして――でも思いを叶えたいなら私達が居る間でないと」アナスタシアは全裸で立ち上がると平服をイルマ王女に着せる――カレンもそれを手伝った。


 イルマは礼をするとそそくさと部屋を出ていった。


「姫様は甘すぎますわ――折角私も覚悟を固めたのに」獲物を逃した狩人の声だった。


「あんなに妬いてたのに現金ね、カレン」王女は護衛騎士を茶化した。


「口直しをお願いしますわ、アナスタシア王女様」カレンは王女を抱き締めながら深い口付けをした――どちらからともなく二人は寝台に倒れ込んだ――そして激しく愛を交わし合った。


 *   *   *


 一方、不老不死ハイエルフの女忍者ホークウィンドはテュライマ女王とその娘二人の夜伽を受けていた。


 三十代のテュライマ女王と十一歳の双子の娘は積極的にホークウィンドを求めてきた。


 三人とも長女イルマと違い性に貪欲だった。


 ホークウィンドは筋力を弱める薬が夕食に含まれていた事に今更気付いた。


 抵抗しようとも思ったのだが、それもままならない。


「ホークウィンド様は“永遠の戦士”でいらっしゃるのですわね――ゾクゾクしてしまいますわ」女王が嫣然と媚びを含んだ笑みを見せる。


「女王陛下――貴女には夫が――」何とか止めさせようと必死に口にする。


「女性同士なら浮気にはなりませんわ。ね、ヴァルシーマ、ヴァルシーネ」


「その通りですわ。お母様――」褐色の肌に銀髪の幼女が答える。


「ホークウィンド様を見初めたお母様は流石ですわ。ヴァルシーネはそう思うのです」もう一人の幼女も同様に答えた。


 娘二人はおしゃまで利発そうな喋り方をしていた。


 ホークウィンドは喉元迄出かかった“止めて”という言葉を何とか止めた。


「ホークウィンド様――もう気付いてらっしゃるでしょうけど、貴女が盛られた薬、こんな作用も有るのですよ」テュライマ女王はホークウィンドの脇を舌でくすぐった。


「ひうッ――」ホークウィンドは思わず嬌声を漏らしてしまう。


 快感を、特に性感を高める作用が有るのだ――そう悟った。


「感じてますわ――お母様、私にも――」双子が両の乳房をそれぞれに舐め上げる。


「くっ――」ホークウィンドは堪えたが、それすら三人にとっては興奮を掻き立てる事にしか繋がらなかった。


 身体の芯に火が灯るのを感じた――三人がかりとは言えまさか十一の娘に感じさせられてしまうとは。


 掌で押し返そうとしてもまるで受け入れているかの様にしか見えない。


「あのホークウィンド様をまるで愛玩犬の様に出来るなんて――思うだけでも達してしまいそうなのに実際はそれ以上――」女王が感極まってホークウィンドに口付けの雨を降らせた。


 一つ口付けされる毎に性感が高まっていく――その間にも娘達は両の耳に舌を突っ込んで舐め回してきた。


「あぁ――」卑猥な音が響く。


 女王は臍の穴に舌を這わせていた。


 満足する迄そこを嬲った女王は両の乳房をホークウィンドの身体に押し付け滑らせながら口迄上ってくる。


 乳房の頂点同士が触れ合った――ホークウィンドは思わず背を反らした。


「待っ――」言いかけた言葉は女王の唇で塞がれた――口を割って舌が滑り込んで来る。


 歯を閉じようとしたが舌を上下から挟み込んだだけだった。


 女王の両手と双子の娘たちの手が乳房を緩急をつけて揉んでくる。


「ホークウィンド様が乱れる様子――私達に見せて下さい」短い髪の双子の一人――確かヴァルシーネだ――がホークウィンドの長い耳をしゃぶりながら熱い吐息を漏らす。


「ンッ――」全身が性感帯になった様な、今迄感じた事の無い感覚にホークウィンドは慄いた。


「ホークウィンド様の大事な部分――もうこんなになってますわ」ヴァルシーマがホークウィンドの秘所に手を伸ばした――そこはしとどに濡れていた。


 そうされるまで濡れている事にさえ気付いていなかった――羞恥に顔だけでなく身体中の血が沸騰した。


 ヴァルシーマは長い直毛の銀髪の持ち主だった。


 抗議の言葉を上げようにも口は完全に女王に封じられている。


 同性同士の触れ合いで――いや、異性も含めた情交でここ迄追い詰められた事は無かった。


 快感だけでなく息苦しさと苦しさに耐え兼ねて失神しそうになる。


「あら――気絶なんて許しません事よ」その様子に目ざとく気付いた女王が唇を放す。


 自由になったホークウィンドは必死に息を吸った。


 頭がくらくらする――それが酸素不足のせいか、それとも身を襲う快楽のせいかその区別すらつかなかった。


 せめて相手に責められる一方というのは避けたい――ホークウィンドは精一杯身体を動かして相手を責めようとしたのだが、双子に両手首を抑えられた。


「余計な事はなさらないで――選ばれた者は最上の快楽を味わう権利が有るのですわ」ヴァルシーネが頬に口付けしてくる――その触感さえも背筋を震わせるような快感を呼び起こした。


 双子はホークウィンドの手を自らの秘所に押し当てる。


 そこはホークウィンド同様にぐっしょりと濡れていた。


 二人は殆ど無い胸をホークウィンドの身体に擦り付けてきた。


 身体に当たるコリコリとした感触――紛れも無く双子も感じているのだ。


「ホークウィンド様、可愛い――」十一歳の小娘とは思えない艶っぽい声だった。


「――ああ」ホークウィンドは身を襲う快感に悶える。


「お願い――も」快楽に流されてはいけない――そう思いながらも未だ女の部分を本格的に責められてない事を嫌でも意識させられた。


「もっと責めて欲しいんですの?ホークウィンド様ったら、いやらしい」女王はそう言うとホークウィンドの秘所に指を侵入させてきた。


「イッ――イ、い」ホークウィンドは自分の口から出た言葉を信じられない思いで聞いた。


 意志に反して身体はその瞬間を待ち受けていた――同時に双子がホークウィンドの薄い胸の一番敏感な所を口に含む。


 舌で突起を転がすだけでなく、歯で甘く軽く噛んでくる――乳頭が取れるのではと錯覚する様な痺れる痛さと気持ちよさが同時に来た。


 どこにそんな力が残っていたのかと思うほどの強さでベッドシーツを掴んでいた。


 急激に昂っていく自分に恐れさえ感じてしまう。


 不意に下半身に殴られた様な衝撃が走った――女王がホークウィンドの最も敏感な女の部分を唇で吸い上げたのだ。


 殆んど同時に女の部分に指を入れられた。


 声を上げる事さえ出来ない――ホークウィンドは意識が半ば飛ぶのを感じた。


「アアッ……!」あっという間に絶頂に達してしまう。


「ホークウィンド様、私めも」女王が身体を反転させ、下半身をホークウィンドの顔面に近づけてきた。


 女王の秘所は触れられても居ないのにぐしょぐしょに濡れていた。


 頭の奥が痺れて来る――相手の想いに応えなければ、そんな思いでホークウィンドは感覚が麻痺したまま頭を持ち上げて女王の秘所に近づける。


「次は私達の番ですわ――」ヴァルシーマがホークウィンドの胸を、ヴァルシーネが母親の胸を弄びながら言う。


「イイ――もっと、ホークウィンド様」口を付けられた女王が感極まって声を漏らした。


 ホークウィンドは女王の愛蜜が口内に流れ込んでくるのを殆ど悦んで迎え入れた。


 四人は絡み合って愛を交わし合った――一晩中、最後には互いの身体の境目さえ分からなくなる程に。


 不老不死ハイエルフの女忍者ホークウィンドは初めて人間の同性に責められて前後不覚に乱れてしまったのだった。

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