8月8日

 8月8日、午前中に部活動を終えた僕は今日もワクワクしながらオオバさんの元へ向かう。相変わらず日差しは暑く照りつけてくるし、暑さで流れてくる汗は目に入ろうとしたり服に染み込んで冷たくしてくるけれど、オオバさんに会うためならと考えたら幾らでも我慢出来た。


「今日はオオバさんとどんな事が出来るかな」


 どんな事とは言うが、僕の中では既に何をしたいかが定まっていて、想像の中であられもない姿のままで両手を差し伸べてくるオオバさんの姿に僕はドキドキすると同時に興奮していた。

思春期の僕にオオバさんという女性として熟した体を持った人との一時はだいぶ刺激が強く、そんな肉体を味わってしまったからか部活仲間が見せてくるエロ本に載っている若い女の人の水着姿や裸では物足りなさを感じるようになっていた。

興奮しないわけではないし、今でも同級生の水着姿や裸に興味はある。だけど、実際に見てみても恐らく満足は出来ないし、同級生との間違いがあったとしても物足りないと感じるだろうと確信していた。それくらい僕にとってオオバさんという女性が魅力的で、その肉体の味わいは段違いなのだ。

そんな事を考えながら歩く事十数分後、オオバさんが住む廃墟に着くと、オオバさんはいつもの白い服で縁側に座っていた。


「オオバさん!」

「……あら、青志君。今日も暑いわね」


 少し刺激の強い格好ではなかった事は残念だったが、オオバさんに会えたという喜びはとても強く、僕はすぐにオオバさんの元へ駆け寄り、その体に抱き付いた。


「あら……ふふ、甘えんぼさんね。そんなに私に会いたかった?」

「はい……部活中も早く時間が過ぎれば良いのにって思ってました」

「そう」

「オオバさん、今日も……」

「ええ、上がっていって。ただ……青志君には申し訳ないけど、明日と明後日は会えないのよね」


 その言葉に僕は愕然とする。


「え……ど、どうしてですか!?」

「ちょっと用事がね。だから、明日明後日は同級生の子達と遊びに行ってみたら? こんなに暑いから、プールにでも誘われるかもしれないし」

「そ、そんなの興味ないです!ど、同級生の水着姿は見たいと思いますけど、オオバさんの方が魅力的だと思いますから!」


 その言葉にオオバさんは一瞬ニヤリと笑ったが、すぐに優しい笑みを浮かべる。


「その言葉は嬉しいわ。でも、用事は無視出来ないから」

「そ、そんな……」

「だから、今日はその二日間の分も楽しんでいきなさい。それに……明明後日は花火大会があるんでしょ?」

「……あ、はい」

「ここからでもたぶん見えると思うし、その日は一緒に花火を見ましょ。その時には青志君が驚くような物も用意出来ると思うしね」

「え……そ、それって……?」


 期待をしながら訊いたけれど、オオバさんはクスクスと笑ってから人差し指を僕の唇にくっつけた。


「むぐっ……!?」

「な・い・しょ。さあ、上がっていって。ここにいても暑いだけだもの」

「は、はい……」


 二日間会えないというのは辛かったが、何かを用意している上にオオバさんと花火を見られるというのはとても魅力的だったため、僕はそのためなら我慢出来ると思った。

そして、いつものように縁側に上がって、オオバさんと一緒に和室の中へと入った後、僕は破れた障子を締めきる。その日の一時は本当に幸せな物で、僕は一足早い“白い花火”をオオバさんに見せる事も出来た。

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