8月3日

 8月3日、夏らしい強い日差しとうだるような暑さの中、今日も僕はオオバさんの家に向かう。オオバさんの家、という表現はあまり適切ではないかもしれないが、あの建物は廃墟であり、無断ではあっても住んでいるのはオオバさんであるからオオバさんの家と呼んでも差し支えない気はした。


「……早くオオバさんに会いたい」


 暑さと熱さの中で僕の口からそんな言葉が漏れる。一昨日と昨日の二日間、僕は名前しか知らない女性と熱い時間を過ごしてきた。男子中学生と成人女性、それを聞けば、本来であれば親子や教師と生徒を連想すると思うが、僕達はそういった物ではない。僕とオオバさんは少し年が離れた男女の関係なのだ。

男女の関係といっても、恋慕う者同士というわけではない。だけど、この二日間で僕は数時間だけ一人の少年から女体を求めて滾り狂う男になり、あの芳醇で蠱惑的な匂いを放って僕を更なる快感へと誘うオオバさんの魅惑的な体を貪り食らうのだ。

動作と興奮によって上がっていく体温と穴が空いているとはいえ障子が閉めきられた室内の蒸し暑さのあつさの二重奏は僕とオオバさんから汗という形でゆっくりと水分を奪う。

だけど、飲料水などで喉を潤すよりも滲み出た汗や僕の拙い愛撫でも嬌声を上げてくれるオオバさんから流れ出でる甘美な蜜を熱くなった舌で必死になって舐めとり、次々と喉から体内へ流し込む方が僕にとっては美味だと感じていた。

そんな一般的な男子中学生ではおよそ体験出来ないような二日間があったからか、午前中の部活動中でも僕は部活仲間に対して優越感を覚えていた。

これまでは僕も彼らと同じで同級生の裸を見たいや同級生と一時の過ちを犯したいなどと言っていたが、僕はそんな彼らとは違って同級生との交わりよりも気持ち良さも満足感も違う経験をしたのだとどこか部活仲間達を下に見ていたのだ。

そして今日もオオバさんさえよければ同じような事をしたい。そんな思いを持ちながら件の廃墟まで来たが、どうにも様子がおかしい。オオバさんがいるような気配がないのだ。


「え……ど、どうして……?」


 オオバさんがいない。その事実は僕を過剰に焦らせ、僕は縁側に上がってオオバさんを求めて中を探し回った。しかし、オオバさんの姿はなく、再び縁側に戻った後、僕は項垂れた。

オオバさんとの幸せな時間はやはり夢だったのか。優越感に浸りながら部活仲間達を下に見ていたバチが当たったのか。そんな事を考えながら落ち込んでいたその時だった。


「あら……青志君じゃない」

「……え?」


 顔を上げると、そこには麦わら帽子を被って白いワンピースを着たオオバさんがおり、オオバさんがいたという事実に安心した僕はすぐさまオオバさんに抱きついた。


「……もう、どうしたの? 私がいないと思って不安になっちゃった?」

「はい……」

「まったく……この二日間でだいぶ甘えん坊になったみたいね。でも、そんな姿も可愛いし、私も散歩に出ていて少し疲れちゃったから、一緒に和室で休憩しましょ?」

「……はい」


 オオバさんに抱きついている事で体の柔らかさと汗で軽く湿ったワンピースの冷たさを感じながら今日も来ていても嫌がるどころかまた上げてくれるという事を僕は嬉しく思いながらどこかまた期待をしていた。

そうしてオオバさんが縁側に上がってそのまま和室へと入り、和室に敷かれていた布団に寝転んで僕に対して手招きをする姿が淫靡に見えた後、僕はまたふらふらと和室へと入り、障子を閉めきった。

室内で行われた事について詳細には説明しない。ただ、一つだけ言える事があるなら、今日も僕という性で出来た小さな獣は甘い匂いを放つ熟した果実にありつけたという事だけだ。

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