第15話 隠れ場所

 条規は、カマキリ頭の言った言葉〝小夜は、この家にいる、お前は病院にいる〟をリビングで反芻はんすうしていた。

〝どう言うことだ?小夜がこの家にいる!〟条規は考えても、糸口にはならないと、〝妖魔の嘘〟と判断することが、一番理論的に思えた。

夏見は、ソファーでボーっとしている。

まるで、充実した〝性行為〟をした女性のように、

うつろである。

条規は、ミスを犯した事に気づく。

「しまった!〝封じのお香〟があといくらも残っていない!」と思わず声に出してしまった。

夏見は、虚な表情で「叔父様‥買ってくればいいじゃないですか?‥私は力が入らなくて‥」と動けない事を伝えた。

「夏見ちゃん、俺、一走り〝回顧堂〟まで行ってくるよ!休んでて、あとあの部屋には、入っちゃダメだよ!〝翡翠〟も動かしたらダメだからね!」そう言いながら身支度を始めた。

夏見は、「入りません‥力がはいらなくて‥ごめんなさい‥」とまだ、うつろである。

条規は、「2、3時間で戻るから、休んでて」そう言って、掛けてあったミニクーパーの鍵をとり、出かけた。

条規は、急いでミニクーパーの運転席に座りミニクーパーに「ちょっと急いでいるから、頑張ってくれ、小夜が戻ってくるかもしれないからさ」と話かける。

条規が旧型ミニクーパーに拘るこだわる理由は、小夜の愛車であったからである。

条規は、小夜がいつ戻ってきても、違和感ないように、できる限り環境を変えずにいるのである。


1時間後


夏見は蒸し返す暑さの中、ソファーで目覚めた。

〝妖魔〟が夏見から、取り除かれ、ここ数年味わった事のない身体の軽さを感じていた。

夏見は、汗を大量にかいたので、シャワーを浴びたくなった。

バスルームへ行き、汗で湿った服を全て脱ぎ、シャワーを浴び始めた。

数分たったであろうか?

〝嗅いではいけない匂い〟が強烈にしてきたのである。

夏見は、危険を感じ、シャワーを止め、聞き耳をたてる。

なにやら、玄関の方から、足音が聞こえるのである。

強烈な匂いだ!

その足音は、すぐに止み、どうやら、条規の仕事部屋へはいったようである。


カマキリ頭「親方様!助けてください!苦しくて!」

「安心しろ、俺が飲み込んでやる」

男は、〝札〟を手にした棒で突き天井から外した。

カマキリ頭「飲み込まないでください!お願いします」

男「お前は、お喋りだ!要らん!」

そう言って、カマキリ頭と豚頭を大きな口で飲み込んだ!

男は、紫色の煙につつまれた。


バスルームの夏見は、匂いから、只事でないのを察した!

裸のまま、とっさに、空のバスタブに入り蓋を閉めてかくれた。


ミシ、ミシ

強烈な匂いのもとが近づいてくるのがわかった。

夏見は、震えだした。

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