第13話 晩餐

 家に着いた条規と夏見は、疲れ切り倒れ込むように、ソファーに腰掛けた。

「疲れたな、夏見ちゃん左手はどうだ?匂いはしないか?」と条規は尋ねた。

夏見は、「大丈夫です、匂いもしませんし、紫色になっちゃいましたけど痛くもないんです。私も疲れました変な警察官はいるし」と疲れを隠せない様子だ。

「確かに、あれは警察官ではないかもしれないな?

おかしな奴だ、気をつけないといけないな、夏見ちゃんは可愛いからストーカーとか?」

夏見は、真顔で「私は、可愛くありません‥叔父様」と謙遜した。

条規は、それ以上会話を進めず、台所へ行き「コーラとアイスコーヒーどっちがいい?」と声を飛ばした。夏見は、精一杯声を張り上げ「コーラお願いします!叔父様」と言った。

氷のたっぷり入ったグラスにコーラを2杯注ぎ、

グラスを持ってリビングに条規は戻ってきた。

「何か精のつくものでも、夜は食べに行こう、

小料理屋に行ってうなぎでもたべるか?

鰻大丈夫かい?」と条規は夏見の食の好みがまだわかっていなかったが、自分が鰻をたべたかったのである。

夏見は、「食べたことありません、宣伝は見たことありますが」とまだ食べたことがないらしい。

条規は、「じゃあ決まりだ、チャレンジだよ」

二人は、夕方、小料理屋があくのを待った。


小料理屋 大和


二人は、掘りごたつ式のテーブルに座していた。

条規は、酒を飲みたかったので、10分程歩いて二人は店に来た。

条規は、焼酎の水割りと、夏見にオレンジジュース、鰻の特上二人前を注文した。

飲み物に続けて、艶々に光る鰻重が運ばれて来た

夏見は、「叔父様‥鰻ってへびの仲間なんですか?‥」と恐る恐る聞いてきた。

条規は、焼酎を吹き出しそうになり、

「違うよ、魚だよ、ウナギ科ウナギ属だよ」と心配そうな夏見に説明した。

夏見は、箸をつけ、一口食べた。

とたん、出逢って以来見たこともない満面の笑顔になった。

条規は、「旨いだろ」と夏見の笑顔を見て嬉しくなった。

〝小夜との家庭があのまま続いていたら、このくらいの娘がいたかも〟と逆に寂しい気持ちも湧いてきた。

二人は、完食し、家路についた。


条規の自宅


ほろ酔いで帰った条規は、家の前の〝異変〟に気付く、タバコの吸い殻が数本散らかっているのと、

ガレージを見るとダイヤルロックの鍵が壊されているのである。

夏見は、「叔父様、あそこ‥」と指差した先には、

街灯の下に、一台のバイクにまたがった人物がいた。

二人がバイクに視線を向けていると、バイクは、

こちらに向かって走ってきた!

二人を横目にすぐ脇を猛スピードで走り去った。

「叔父様‥いま匂いました‥卑猥な匂いが‥」

と夏見が言うと、条規は昼間のコンビニの坊主頭の

筋肉男の顔が思い浮かんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る