第11話 師弟の仲違い

 条規、大島師匠は、まだ落ち着かない夏見に

〝水〟を飲ませた。

夏見は、「大丈夫です‥まだ匂いあるんですけど、

耐えきれない程ではないですから‥叔父様」

そう強がり紫色になった左手を摩ってさすいる。

大島師匠は、「条規、お前の気持ちはよく解る。

がだ、あの妖魔は、一刻も早く祓わなければならない!夏見ちゃん危険は元より、あの〝飲み込む〟力もタチが悪い、放っておいたら危険じゃ!」と条規を説得した。

「捕獲します」と条規は意思を伝えた。

「捕獲じゃと⁉︎なんだお前〝陣〟を使ってヤツを捕まえるつもりか?止めておけ!あれ以上デカくなったら祓うどころでなくなるぞ!」

条規は、「やっと、小夜の手掛かりが掴めたんです。この15年、除霊士としてやってきたのも、小夜を見つける為、師匠の言いつけとは言え譲れません!」と反抗した。

「ダメじゃ!ダメじゃ!ダメじゃ!祓うんじゃ!」

「捕獲します‥」そう言って条規は帰り支度をはじめた。

〝陣〟と条規は軽くいったが、条規は修行で一度

大島師匠の手ほどきを受けただけであった。

条規は、夏見に肩をかして二人で依頼者宅を後にしようとした。

背中から「ダメじゃぞ!条規!少し休んだら、祓うんじゃ!後で泣きついても知らんぞ!」条規は振り向きもせず、帰路についた。


ミニクーパーの中


夏見が「叔父様‥私は平気です‥どうせ、リストカットして死ぬはずだったんです‥叔父様のお気に召すままにしてください」そう、声を振り絞って伝えた。

条規は、頷き「助ける、小夜も夏見も、絶対に助ける」そう決意を口にした。


条規と夏見は無言のまま、自宅に向かっていた。

時折、条規はシフトチェンジの折に夏見の腕に手をあて、「大丈夫だ、任せろまかせ」と口にした。

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