第10話 選択

 条規は、迷わずカバンから〝伊吹〟を取り出し、

念を込める。

徐々に柄から赤い光が出始める。

条規は、〝伊吹〟に念を込めるのは久しぶりであった。

夏見は、左手を右手で押さえていたが側にあった〝ハサミ〟に手をだそうとした!

自傷行為がはじまりそうなのである。

「条規!急げ!」大島師匠は、動かない手で夏見の右手を必至に抑えようとしてる。

条規は、深く息を吸い吐いた!

それと同時に〝伊吹〟に赤い刃がいでる!

「カマキリ頭、覚悟しな!」そう言って二つ頭のカマキリと豚頭を斬ろうとした!

カマキリは「イイノカ?あの女の行方が一生ワカラナクテモ?」

条規は、その言葉を聞いて雷に打たれたような感覚を味わった。

「あの女とは、誰だ!小夜か!」と条規は取り乱す。

ここで条規は、除霊士として大きな間違いを犯した。

〝小夜〟の名前を出したことである。

妖魔とは嘘つきなのである。小夜と名前をだせば

知らなくても、妖魔は〝そうだ〟と言えばいいだけである。

大島師匠は、「条規!迷うな!祓え!」と助言するが条規は、小夜のことを出され冷静さをかいていた。

「何処だ!何処にいるんだ!言わないなら斬る!」

と不利な状況で脅しをかける!

「騙されるな!祓え条規!」大島師匠が夏見のハサミを押さえるのもキツくなっている。

カマキリ頭は、「イエナイヨ、あの方から口止めされてイルカラ」カマキリ頭と豚頭はケラケラと笑う。

大島師匠は、「ここまで!」と声を上げ、自分の右手の〝数珠〟を夏見の左手に通し!

「夢魔封じ!」と叫び呪文を唱えはじめた!

夏見の左手のカマキリは「マタナ、ジョウキ!」と見る見る夏見の左手に入っていく。

夏見の左手は〝紫色〟になってしまった。


条規は、荒い息を整え、〝伊吹〟の刃を収めた。

大島師匠は、しゃがみ込んでしまっている。

条規が元へ寄ると大島師匠は、「この馬鹿モン!」

と動かない手で、条規をたたこうとした。

唯一の救いは、三井大輝君、豚頭に呪われた若者の

顔色がいい事であった。

条規の小夜を探す旅は、混迷を極めた。

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