五十二件目 猫をかぶる          

寝台に寝かされた悠寿。

そして彼女の手当を施す雅客。


「お前、…一体どんな事したらそんな顔面破壊まで陥るんだよ。」


「きづいたらはかいされてた」


がらがら蛇が住み着いたような声で返答する悠寿。いつもの透き通る様な甘い声は何処へ行ってしまったのだろうか、と両者ともに感じた。



「はぁ…。ならもう一度、今のお前の様態をいってくからちゃんと聞けよ。…眼球破裂、顔面神経麻痺…、後は一寸痣が出来た位か。…取り敢えず、眼の部分だけ包帯巻いて隠しとくか。…今は薬に煩ぇ卯島もいないから、彼奴にちゃんと診てもらうまではそれでいろ。」



「…頬の火傷、大丈夫?かな。誰かが見たときにぞわってしない?」


「…あ?頬の火傷?…まじか其処も気にするか…。じゃあ、しばらくは此方にしとくか。…ほい、これならどうだ?」


悠寿の意見を聞き、一度眼の部分に巻いた包帯を取り、顔全体が隠れるようなチュールを被せることにした。傍からは悠寿の表情が読み取りにくい為、多少周囲から心配されることもあるだろうが、彼女の要望を叶える為には仕方のないことだろう。






「…いいかんじ。ありがとう。」


チュール越しににこりと笑いかけると、側に置かれていた薬とコップ一杯の水を体内に流し込んだ。

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