五十一件目 わっちゃあ嫌
部屋から逃げ出した悠寿は、この遊廓に住みつく化け物退治と出口の両方を解決させるために作戦を立てていた。
「はぁ…本当最悪。思ってたよりもややこしい奴等しかいないし…。恐神達がこの状況に巻き込まれてないと良いけど…。」
周囲の部屋からは甘い声が鳴り響き続ける。まるで悠寿が先程の行為を思い返す為に用意されたシナリオのようで、それが彼女の思考回路の邪魔をしているようにも見受けられた。
「…取り敢えず
***
例の楼主を名乗る男がいると聞いた遊女屋へ訪れた恐神。
お岩達を連れて行くか否かで迷ったものの、お岩が“女“であることと、その他に雅客からの提案により、他の者達は別の所で犯人を取り押さえるという作戦になった。
「んあ?おやぁ、主さんいい男だっけねぇ。わっちが相手しなんすか?」
恐神の前に女が現れた。
周囲の男が一斉に振り向くような百合のような綺麗な女は、目の前にいる恐神の肌に指を滑らせながら距離を詰める。
「す、…すみません。此処の遊女で悠…じゃなくて、月の兎…って奴いませんか?」
女は一瞬きょとんとした顔するも、にこりと笑いながらこう答える。
「月の兎かえ?…あぁ、それは…――わっちの事でありんす。」
「…え?あぁと…多分お姉さんとは別の人だと…。」
女は先程と同様に、にたりと笑っている。夕闇が差しかかる表情は何処か不気味に見えてきたせいで、恐神は無意識に後ろへ後退りする。
しかしそれを塞ぐように、“月の兎“を名乗る女が恐神の腕をぎゅうっと引き寄せてから強く抱き締めた。
「ねぇ、主さん。わっちにそなたさまのお胸をお貸しくだされ。」
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