三十六件目:洗脳

「さてと...、取り敢えず、お岩ちゃんの買い物してるところにでも行こうか。あんなに待たせておいて、勝手に此方だけで行動しちゃうのも申し訳ないし。」


軽く身体を伸ばしながら、お岩が普段利用しているスーパーの直ぐ側にある電柱の頭の部分に座りブツブツと呟く悠寿。傍から見たら、怪しい人物に見られるかも知れないが、悠寿はそれくらいの事なぞ気にしている余裕はない。



「そうだねぇ...、確か今あの探偵社の社員が二人も消えてるんでしょ?という事はさ、事務員的存在の岩ちゃんまで消えたら世紀末じゃん」


「うるさい、そんな事行ってる暇があるならさっさと探せ」


すると、悠寿の身体は黒煙に包み込まれていき、少し経つと黒を基調とした本来の姿へと変化していた。



「...やっぱそっちの姿の方が可愛いし似合うじゃん。流石俺の彼女。」


「人生の中で一瞬しか出演出来ないような脇役風情は口を慎め。」




普段の天真爛漫且つ軽やかな話し方の悠寿は一体何処に行ったのか。

いや、これは普通なのか?

それじゃあ、ツンが超強めのツンデレなのか?いや、デレが今は見えていないから、ツンデ...ツンドラ?ん?あれ?



普段余り考え事をしないマイペースでそれこそのらりくらりとしている雅客の頭の中では、珍しく“考え事“を遂行していた。



「そうだ、あのさ岩ちゃんや他の社員さんってさ、何か特徴的なものとか無いかな?探すのにそういうの欲しいし。」


悠寿の首に巻き付き、身体毎浮遊させながらスーパーを出入りする人間の姿を目に焼き付けつつ、浅はかな味気のない記憶からお岩の特徴と照らし合わせる。



「お岩ちゃんは、腰まである黒髪を後ろで結いまとめてて、服装は決まって着物が多いから、比較的目立つ方。そして、性格面ではネガティブ思考で大人しい感じだけど、実際は凄く魅力的な人。

恐神は不良みたいな服が多い、あとはストリートファッションが多いかな...何でも着こなしちゃうファッションリーダーであり、自慢の社長だよ。

それで、マイズミは金髪だけど個性的な色合いのスーツ姿だったはず...、こういうときでも冷静沈着な判断で思考できる真面目さん。」


「ふぅん、なるほどぉ。皆個性強いね。」


「あんたもね。」




そんな会話を繰り返しながら、早二十五分。

するとスーパーの出入り口から着物姿の女性が手提げ袋を持った状態で姿を表した。



「お岩ちゃん!!」


もしかしたら何か事件に巻き込まれていたのではないか、と少し懸念していたのもあってなのか、高所からふわりと優雅に地へ舞い降りるとお岩の元へ駆け寄る悠寿。


するとお岩は、綺麗なウィスパーボイスで何処か不安を帯びた表情をしている悠寿に声をかける。



「?あれ、悠寿様...?どうかされました?

えっと...私は買い物を済ませていただけなので、ご安心して下さい。」


自身が予想していたよりもまだ元気そうなお岩を見て安堵すると、悠寿はこういった言葉を投げかけた。



「そう...ならいいの。取り敢えず、彼奴等二人が見つかるまでは単独行動はしないで。...雅客がいるからとて、いつ私達が事件の被害者になるかなんて予想出来るわけじゃない。此の“神隠し事件“は恐神達を助け出して、早急に終わらせる。」


「...恐神、ねぇ...。元気だと善いけど。」


少しだけ、雅客の顔色が深い闇に取り込まれたような表情に見えた気がした。



「何仰ってるんですか、きっと恐神様方は元気ですから、大丈夫ですよ!でも、悠寿さんの仰る通り、単独行動は控えないとですよね...。私にも、もし何かやれることがあれば遠慮なく云って下さいね」


にこりと微笑するお岩。

その姿に心この状況の影響なのか、心做しか安心感を覚えた悠寿は其の姿を見て普段とは違う緊張混じりの笑みで返す。




「じゃあ、行くよ」


悠寿は眉に力を入れ、黒のフードを目線が隠れる程まで深く被る。



雅客は悠寿の言葉につられるように、横に立ち歩こうとした。

しかし突如耳に何か生暖かく、そしてひんやりとしているようにも感じられる異物を詰め込まれるような不快感が雅客の行動を封じ込める。


そして、何故か咄嗟に隣りにいる女の顔を睨みつけてしまった。



「うん?何でしょう。そんなに見つめられたら、......縺雁燕繧ゅが繝ャ縺ィ蜷後§縲∵ュ、縺ョ螂ウ縺ィ蜷後§迢ゅ≧縺溘a縺ョ邊セ逾槭r縲∵・ス縺励>蟷ク遖上r縺ッ縺ゅ▲縺」縺ッ縺ッ縺ッ縺ッ縺ッ縺ッ縺」縺ッ縲√°縺ゅ▲縺九°縺九°縺狗函縺阪※縺セ縺咏函縺阪※縺セ縺縺雁燕繧ゅが繝ャ縺ィ蜷後§縲∵ュ、縺ョ螂ウ縺ィ蜷後§迢ゅ≧縺溘a縺ョ邊セ逾槭r縲∵・ス縺励>蟷ク遖上r縺ッ縺ゅ▲縺」縺ッ縺ッ縺ッ縺ッ縺ッ縺ッ縺」縺ッ縲√°縺ゅ▲縺九°縺九°縺狗函縺阪※縺セ縺咏函縺阪※縺セ縺�縺雁燕繧ゅが繝ャ縺ィ蜷後§縲∵ュ、縺ョ螂ウ縺ィ蜷後§迢ゅ≧縺溘a縺ョ邊セ逾槭r縲∵・ス縺励>蟷ク遖上r縺ッ縺ゅ▲縺」縺ッ縺ッ縺ッ縺ッ縺ッ縺ッ縺」縺ッ縲√°縺ゅ▲縺九°縺九°縺狗函縺阪※縺セ縺咏函縺阪※縺セ縺」


嘗てお岩だったはずの姿が、本当に人間であったのかと疑問に思う様な形態へと代わっていった。これは、お岩ではない。此の姿はお岩ではない。あの時綺麗だと一瞬でも思った自分をぶん殴りたい。











あァ、このままだと此の腐敗した化け物に飲み込まれてしまう。



「!!ッッ雅客!!!!」


何か猟奇的な強い感情を投げつけられた様に、悠寿は勢いよく振り向き鋭く光る鎌を問答無用で容赦なく化け物を切り刻んだ。







そこで俺の記憶が途切れてしまった。

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