三十二件目 迷蔵

かくれんぼ。


鬼と隠れる人に別れて遊ぶ、平安時代以前からあった古典的な遊びの一つ。




恐神とマイズミは、鬼を一人だけ置いて、隠れてる人達は皆鬼の知らないうちに何処か遠いところに帰ってしまったんじゃないかと見まごうほど見つからなかった。これは最初から二人はその場にいなかったのでは無いかと結論づけた方が最適解なのでは無いか、と思い始めているのも一理ある。


「人が消えるだなんて噂は何も聞いていなかったんだけどな...」


普段は騒がしい二人がいないからか、心做しかこの場が視覚的にも心理的にも広く感じられる。ただの依頼だと思っていったのに、依頼人兼あのケチャップ頭にはめられたのかな。


「...そういえば、悠寿さん。昨日の依頼の件で何かあったのですか?もう出社時間の9時を過ぎているのに、マイズミさんまで来ませんし...」


「...あぁ、それはね――」


と、喋りだそうとした刹那。




「こんにちは〜!!おはようございます〜」


昨日入社したばかりのケチャップ頭が入ってきた。ちなみにこいつの名前は、昨日は聞きそびれて何もわからないままだったが、“紀伊“というらしい。




「...紀伊、随分と来るの遅かったね。寝坊でもした?」


「いやいや〜?ちょっと先輩達と遊んでてさ。

...あ、そうだ豆電球ちゃんには教えてあげる。今朝のニュース見てみてよ。面白くて昨日食べた夕飯まで出ちゃうから。」


「うん?...分かった。」


妙に意味深な言動を特に罪悪感も何も感じていなさそうにしながら、次々と口から並べていく紀伊に言われた通り、事務所に置いてある比較的小さめの液晶テレビにニュースを映し出す。




普段はゆるゆるしている表情筋が凍りつくように固くなった。


「...なにこれ。」


「...」





「ね?昨日食べた分までこんにちはしちゃいそうなニュースでしょ?」


画面を侵食するように液晶に写っていたのは、




















ボク悠寿だ。

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