二十九件目 嗅覚の暴力
ちょうど良い子が寝る時間を過ぎた頃だろうか。
「...ねえ、此処に本当に現れるのかな。あの〜、なんだっけ。あれよ。」
「変な化け物でしたっけ?確かネットニュースでも今少し話題になってるみたいっすけど、第一発見者水道会社のおじさんで、第二発見者が確かそれを面白半分で撮影しに来た動画クリエイター集団って話っすよね。」
普段の彼女のトレードマークである、菜の花色の髪とは違う闇に溶け込む艷やかな黒髪を靡かせ先頭を我こそがと歩みを進める少女、悠寿の隣を歩くマイズミがスマホで現在地と位置情報を照らし合わせながら目的地へと向かう。
「そういや今日は普段の格好とは違うっすね、なんかあったんすか?」
普段マイズミが見ている悠寿は、丈が胸元まである白の半袖パーカーに対し、腕部と腹部には独特なデザインのインナーがまとわりついており、ズボンはニッカポッカのようなズボンと、やや大きめのスニーカーを履いている。
だが、今彼の隣を歩く少女は背中まである直線的な黒の艶髪をひとつ結びにし、全体的に黒を基調とした和装である。
「そうかな...?ちょっと気分で変えてみたの、似合う?」
普段のおちゃらけた子供のような無邪気な笑みを見せる姿とは違い、黒のレースを模した手袋を頬に当て、毒林檎のように紅に染まる唇が普段の彼女とは違う別人を演出させる。
「何だか別人みたいっすね...」
普段とは違うギャップに少し溺れるマイズミであった。
*
ちなみにその後ろでは、
「あ“ッ“ッ “、ね“こ“てゅ“あ“ん“...」
と呟きながら猫達と戯れる不審者(恐神)を何の躊躇いもなく写真に収めていた悠寿がいたことは言うまでもないだろう。
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