二十二件目 破天荒な清楚系転校生

黒髪だの茶髪だの、メイクで顔を化けさせてる人間だの昔とは違うんだな...今の高校生たちって。私が知っている時代と違って、なんだか大人っぽいというか一人一人の雰囲気を見ている限り、メイクしている人としていない人で綺麗に二極化しているようだ。



あのとき以来の久々の学校生活。正直学校に行くのは今でも嫌気がさすし、いきたくないというのが本音である。だけどそれは、

                           先生が許さない。




「それでは自己紹介をお願いします。」


私に笑顔を向けながら、名前のない身体のないボクに無理難題を押し付けてくる。そして、新品のおもちゃを買ってもらえて、早く遊びたい気持ちを早く遊びたい気持ちをさらけ出すような弾けた笑顔で此方を見つめる人間も入れば、それに反抗するようにお世辞にも喜んでくれていないような表情を此方に向けている人もおり、少し複雑だ。


「...えっと、――高校から転校してきました。久田 隼世って言います。よろしくお願いします。」


普段みたいな明るいテンションでいたら、きっとあのときと同じ目にあってしまうかもしれないから、目立たないように極力全てにおいて普通を貫き通して過ごさなくては。




’’誰あの美人...彼氏いたりすんのかな...’’


  ’’髪なげぇ〜...’’

             ’’あんなやつ近隣にいたのか...’’


「それじゃあ、久田さんはあの窓際の席に座ってね。」


「承知しました。」


流石に未成年がずっと学校にいないで昼間うろちょろしていたら周囲の視線が気になるからね...それにボク生徒手帳も身分証明書も何も持ってないし...


「ねぇねぇ、久田さんってどこに住んでんの??」


 「そんな事直球に聞いたら嫌われるでしょ。...ねぇあのさ、良かったら今日一緒に御飯食べない??」


「それもそれで直球すぎじゃね?あ、そうだ。次体育だからさ、いきなりハードで大変な授業やけど、一緒に移動教室行こうや。」


転校生って称しただけで人がこれでもかと言うほどに群がってくる。誘ってくれるのは嬉しいのにどうしても後ろめたい気持ちが邪魔してきて、本音が言いにくい。




「...誘ってくれるのはとてもありがたいんだけど、今日は緊張から顔がこわばって不愉快な思いさせちゃうかもしれないから、一人にさせてくれると嬉しいかな...」


「そっか〜...、残念。」


「じゃあ今度又誘うから!!」


そうだ、あのどこぞの粘着質な男とは違ってこういう風にすんなり諦めてくれる方がボクにとっても向こうにとってもウィンウィンの関係で済ませられる、一番の最適解だ。





「ふぅ...とりあえず恐神達の今現在の様子を...」


確か今日は、マイズミが一緒に恐神と行動するはずだから、特に大きな事件は起きない気がするけど、実のところ心配になっている自分がいる。ボクの予想が的中しないことが今一番気になるところだ。




「あれ何してんの隼世ちゃん〜、もしかして、彼氏さんとメールでおしゃべりしてるとか??」


ちょっとだけガラついたような一瞬名前を呼ばれたような気がするけど、きっと気のせいだろう。


「...」


「え、もしかして初対面の人に対して人見知りしちゃうタイプなの〜??かわい、

...けどさぁ、無視されると流石に俺でも苛つくんだけど。」


先程は背中から聞こえたはずの声が、今度は鼓膜に囁いてくる。何だか背中と耳あたりに熱がこもっているような...


「彼氏ではないですが、初対面でゼロ距離は辞めて頂きたいですね。」


「え〜そんな可愛い顔してるのに、意外と中身は毒舌なんだ〜

でもソレも含めて可愛いから良いけどさ。」


’’おい渚々世...久田さん嫌がってんだからやめろよ...’’


「え??別に嫌がってないよね??だって隼世ちゃんツンツンツンなツンデレだから冷たいこと言ってるだけで、実際はそうじゃないからこういうのしても、内心は喜んでるよ」


「何分かりきったような言い方してるの...初対面でこんなに距離を詰められるのは流石に嫌なんだけど...」


「んも〜!!ツンデレで隼世ちゃんは可愛いなぁ〜!!」


こうしてボクの起承転結で先の読めない学生生活とやらが再開した。



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