十四件目 離魂体と生きる幽霊
*少々性描写あり
一方、その頃のマイズミはと言うと
「あの...本当にこれでいけるっすかね...っていうか、オレら依頼を拒否られた身なんすけど...」
「大丈夫、今のボクと君...普段よりもめっっっっちゃ可愛いから」
「いやあの...そういう問題ではなくて...」
またもや城から抜け出してきた悠寿はとある女性の離魂体と化し、マイズミは‘’生きた幽霊のお岩‘’に仮装していた。
「そういや因みに、何故あの...この格好に?」
マイズミは普段、短髪と深みのある緑に染め上げているが、今日は蝋燭のように顔が溶け、髪も細く栄養失調を疑われるような瀕死に近しい‘’女‘’になっている。
「え?決まっているでしょう? ‘’ハニトラ‘’するの。
...あ、もしかして意味わからない?パパ活とか言ったほうが伝わる?」
「いや...えっと...その意味はわかるんすけど...何故そういう経緯に至ったのかなぁ、と...」
「え〜?うーん...ボクの気まぐれ☆」
そう言って悠寿はマイズミに対して、甘酸っぱい表情を見せ舌を出しながら微笑む。
「き、気まぐれ...それにオレを付き合わせるのもどうかと思うんすけど...それにここにいたら、城の家来がやってくるのでは...」
「...(意外と押されたら渋々やるタイプかと甘く見てたわ...) やっぱ君もそう感じるよねぇ...。えっと、ボク今日は素直で優しいから、ちょっとだけネタバレしてあげよう。あのね、ボクの掴んでいる情報...、さっき近隣の人から盗み聞きした話によるとね、ついさっきお岩ちゃんが伊右衛門っていう家内の男に何らかの理由で家から追い出されちゃったらしくて、その後現在内縁関係に近い関係を結んでいる ‘’お花‘’ っていう女が来るらしいの。」
「(随分と詳しく知ってるなこの人...というか内縁関係に近い関係を結んでいるとか近隣の人からの盗み聞きだとしても、どうやって知ったんだろう...つか家内の男と浮気相手?の女性の名前知ってるのも、オレと恐神先輩でさえすぐ掴めなかった情報なのに...)
...すみません、悠寿さん。何でそんなに詳しく存じ上げているのでしょうか...」
マイズミが脳内で全神経に血を行き届かせながら、全ての五感を利用するようにして少し前の時代を生きた男、【江戸川乱歩】の存在を頭の片隅に起きながら同時進行で‘’2つ‘’の推理を始める。
「...昼間に時間が余りすぎて退屈だったから、ボクなりに色々情報収集してその人物に関する情報を掴んでから、ちょっと拷問を...」
またもや悠寿の顔には幼児が描いたにんげんのいらすとのような顔が浮かぶ。
「ご。拷問...何だかやり方が何処かの組の女帝みたいですけど...
ま、まぁとりあえずその...どういう道筋で伊右衛門さん?をはっ倒すんすか?」
「うん、そうね。
...とりあえず、ボクがその伊右衛門っていう男の相手をする。それで君は、私が部屋を暗くするのを合図に中に入ってきて、‘’幽霊‘’が襲うようなイメージで伊右衛門を脅すようにして私を刺して。」
彼女は何のためらいもなく、本物と思わしきナイフを太もものチョーカーのようなベルトのようなところから取り出し、普段の柔らかい笑顔を崩さず言葉を吐きながらマイズミに作戦を打ち明ける。
それに対しマイズミは少し後ずさるようにしながら、
「...は?え、あ...一応悠寿さん...人間の見た目してるし...刺したら...それでこそ...えっと...」
と、男らしくない弱々しさをさらけ出しながら、まるで幽霊に怯えるような声で悠寿に言い返す。
「...はい、これで說明は終わり!デモはやれないからもう速攻で本番だよ?
じゃあ、又後で君がボクをどういう思いで刺しに来てくれるのかを楽しみにしてるからね」
そう言って笑いながら手を振り、数メートル離れた例のターゲットの男の家へ向かう彼女の背中は妙に儚いホタルのように見えた。
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