3-7:旧南都砂漠ダンジョン
グリーンは旧南都のダンジョンへとやってきていた。
西都の草原から始まるダンジョンは後半の沼へと行くうちに敵が水属性補正を得るように、東都のダンジョンは洞窟の深い階層へと潜ることでだんだんと闇属性補正を得る。
現在東都の支配下にある南都のダンジョンは砂漠型ダンジョン。ここに現れる敵は火属性補正、及び風属性補正を持っている。
自身のスキルとの相性を考えれば洞窟は相性が悪い。
「天気予報士ほどオールラウンダーだったら楽なんだけどな。」
砂漠へと足を踏み入れたグリーンはまずは真っすぐに手を空へと向け、スキルを発動させる。
「“邪教徒の征く道に光などない”……さて、行くか。」
砂漠に暗雲が立ち込める。
これにより砂漠のビスデスはAGI低下を受ける。
動きの鈍いビスデスからMPを奪い、呪いをかけて進んでいく。
「“邪なる簒奪” さらに“邪なる簒奪”。そして“邪なる怨嗟の呪詛“これで終わり。」
砂の中から奇襲をかけてくる虫型ビスデスをスキルの連携でササッと倒すと突き進む。
「ビスデスはやっぱり弱いな……いや、MP自体少ないみたいだししょうがないのか?」
ガンガン倒してレベルが上がっていくのがわかる。
25レベルを超えてさらに深みへと進んだとき、それは現れた。
「キチキチキチキチキチ……。」
「なんだ……?」
「キチキチキチキチキチ……キチキチキチキチキチ。」
砂の中から聞こえてくるその音はまるで金属質の軽いもの同士がぶつかるような音だった。
軽く、高いその音は段々と自分の周りへと近づいている。
そしてその音は唐突に止まる。
「……来るか?」
100メートルほど先から黒い何かが飛び出すと、視認できるギリギリの速度でグリーンを吹き飛ばした。
「おいおい……HP減ったぞ?今のスキルか?」
それになによりも……視認が困難な速度だった。
この砂漠は“邪教徒の征く道に光などない”の効果によってAGI低下2段階のデバフを全ての敵に与える。つまりそれが示す事実は。
「闇属性補正を持っているか、AGIがそもそも高いか……あとは……。」
足元が爆発する。
黒いそれは甲殻類の甲羅のようなものだった。
それが一瞬突き出たかと思うと薙ぎ払うように回転する。
「……やっぱり体がでかいとそうだよな?」
出てきたのは大型のビスデス。
それもサソリをモチーフにしたのか長い尾の全長は100メートル以上ある。
ゆっくりと、AGI低下を受けているであろう速度で姿を現したそれはこの世の物とは思えない醜悪な見た目をしていた。
「キモイってぇ……バリキモイじゃん!」
グリーンが面食らうほどのその見た目。
長い尾に対して不釣り合いなほどの小さな2メートルほどの甲殻類の体。
そこから伸びる8本の人間の腕。
その肘にはこの世を恨まんと顔を歪める人間のデスマスク。
正面には巨大なカエルの頭が焦点の合わない瞳でこちらを眺めている。
だらしなく口元から垂れ下がる舌。
そこから流れる粘着質の涎。
「キチキチキチキチキチ……。」
音を立てながら100メートルはある長い尾をゆっくりとした動きで持ち上げるその動きをグリーンは見ていたはずだった。
「……。」
「来る!?」
一瞬反応が遅れた。
AGI低下を受けてもなお、あの長い尾は最小限の動きで広範囲を攻撃できる。
それを証明するかのように、グリーンにその尾は叩きつけられた。
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