3-3:デネブという星

アリスト☆デネブは無人島内を探索していた。


「俺だけが……俺だけが弱い!」


ポラリスにアルタイル、ベガといった3人の仲間たち。

ポラリスは指揮を執りながらクロヌリに数度攻撃を成功させている。

アルタイルは天候操作によって戦況を大きく有利に変え、セレブリーを倒した。

ベガはあのグリーンと対等に戦い、クロヌリを倒す時間を稼いだ。


「それに比べて……俺はぁ!」


苛立ちをぶつけるように木を殴りつける。


「せめて俺が……セレブリーを止めていれば!」


大半のプレイヤーが、あの残虐な男に倒された。

アルタイルに舐めプしたセレブリーが自滅しなければ恐らく被害はもっと拡大していたはずだ。


「アルタイルは後衛だ。戦闘力を求められているわけではない。だが……俺は!」


草むらを蹴り飛ばす。


「俺は……アタッカーだ。ベガのように、ポラリスのように戦闘力がなければ……何の意味も無い!」


配信すらせず、無人島の中を走り回るアリストはやがて海岸に辿りつく。

切り立った崖に囲まれた小さな砂浜。

そこには二つの人影。

片方はパラソルの下にシートを引いて横になっており、もう一人は傍で座っている。


「……カップルか……邪魔しちゃぁ悪いな。」


「あら?グリーンは私のものよ?勘違いしないでくれる?」


黒いビキニの女。装いこそ違うが東都の女王アマリリスで間違いない。


「アマリリスだと!?なぜここに!?」


その叫びは砂浜にも届いたようで気づいた二人がやってくる。


「アマリリス!?なんでここにいるんだよ?ここはNPCいないんじゃねぇのかよ!?」


「おぉ。やっぱウチの大将もいい体してんねぇ!俺様ちょっと感激だぜぇ?」


二人の顔を見てその正体にデネブも気づく。


「グリーン……そしてセレブリー……。」


「……?」


グリーンは目の前の相手がわからずにいた。


「おいおい、そんな“こいつ誰だっけ?”みたいな顔してやるなよ、あれだよストリーマーのメガネ、緑のやつ!」


「あぁ……そんな奴いたなぁ……元気?」


グリーンのデリカシーのない発言にデネブは怒る。


「どうせ俺は弱いさ!でもそんな言い方は無いだろ!」


「おやおや……イベントの報酬を渡しに来たんだけど……まぁいいか。」


アマリリスはデネブを掴むと軽くその首を刎ねた。

デネブは怒った表情のまま黒い粒子となって消えていく。


「あ、サクッとやるのね。大将、イベントの報酬って?」


「アタシ達思いっきり敵側だったのに報酬出んの?」


「出すよ。まぁ、これは予約券みたいなものだから今は何の意味も無いんだけど。」


そう言ってアマリリスは二人の背中へと回り、軽く手で触れた。


「セレブリーはそれでおしまい、あとはアオバの方だね。」


スルスルと青葉の背中を撫でまわすように撫でるアマリリスはスルッとグリーンの水着をほどく。


「ふざけんな!気づかないわけねぇだろ!」


「おや、手厳しい。まぁこれで報酬は渡したから帰るよ。長居しちゃいけないらしいから、ね。」


アマリリスが黒い粒子となって消えていく。

それを見送る二人はまた、浜辺へと戻っていった。

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