3-4:黒い翅
バカンスイベントによって一日が潰れ、東都ではアマリリスが何やら計画を立てていたようだ。
「フフフ……アオバもスドウもこれで面白いことになる……。」
「我が女王、何か面白い事でも?」
白い毛並みに覆われた体。
獣人のような見た目のデスティアの中でもかなり獣に近い見た目の男がアマリリスの傍でその独り言を聞いた。
「いや、なんにせよ私の計画は滞りなく進んでいるということさ……。」
「ハッ……すべては東都のために。」
「お堅いなぁ……もう少し笑ったら?」
「クロヌリの抜けた穴を埋めなければなりませんから……。」
「オクタディアはもっと自由な雰囲気でいいのになぁ~。」
「自由など求めていませんから。デスティアという種のためなら……。」
「なんでもするって?……そういうのは求めてないなぁ……。」
アマリリスは立ち上がり、歩き出すと一枚の絵の前で立ち止まる。
虫のような生物が一つの球となった絵。
その絵を愛おしい者、グリーンに触れる時と同じように優しく撫でる。
「ミュラークイーン・アマリリス……ね。我ながらうまく名付けたものだよ。」
「……?」
「いいや、人間を滅ぼしてしまおうと思ってね。まずは戦力の増強からさ。」
「ハッ……すべては東都のために。」
アマリリスは男が消えたことを確認すると、独り言のように呟いた。
「ティラーもビスティアも、ビスデスも……ティラーですらみんな同じものだってことを忘れて争い合うんだから……嫌になるね。」
「ダンジョンが産まれて2000年。最初に姿を現したビスデスも、次に姿を現したティラーも、ビスティアも……そしてデスティアも全部……ミュラーという一つの種族だったことを忘れて馬鹿みたい……。」
自重した笑みを浮かべるアマリリスはさらに続ける。
「いや、そもそも私たちはデータの集合体……ミュラーなんてものすらこの世界の秘密の一端だったんだもの……グリーン。」
口づけした時の彼女の顔を思い出す。
「友達……本当の意味での、初めての友達。そう、私は人間になって見せる。そしてグリーンと……。」
「でもこれは本当に私の心なのかな……?」
「私は本当に青葉と……友達になれたのかな……恋ができるのかな……?」
「人間になりたい。」
アマリリスの声が小さく響く。
その声は、まるで合成音声の様に、抑揚のない平坦な音だった。
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