3-1:戦争後のバカンス

小さな砂浜に一人の影があった。

真夏ほどの日差しも無く、静かに打ち寄せる波は時間の流れをゆっくりとしたものへと感じさせる。

そんな人影に近寄っていくもう一つの影。


「……サンオイルはいかが?」


セレブリーは海パン一枚でやってきたくせにそんなことを言い出した。


「触りたいだけだろ変態。……だりぃ。」


グリーンはビキニに着替え、真夏でもないこの砂浜でパラソルを開き、時間を潰していたのだった。


「まさか大規模侵攻イベントの後がバカンスイベントとはな。」


セレブリーが隣に座って口を開く。


「……アイテム収穫祭って言われてもなぁ……アタシら、そこまで消費してないんだよなぁ……。」


「普通こういうのって専用マップに強制的に飛ばすんじゃなくて自由に出入り可能な形にするべきだよな。」


そう言ってシステムウィンドウを開いたセレブリーはイベントページを見せる。


【第一回バカンスイベント】

・プレイヤーは期間中、無人島エリア【アール・エグルス】に自動的にログインします。

・無人島エリア【アール・エグルス】内ではティラーウェポンの呼び出しが不可能となっており、また無人島内専用装備に着替えることができます。(見た目の設定は初回ログイン時に行います。)

・無人島エリア【アール・エグルス】内には各種アイテムが自生しており、比較的入手難易度の高いアイテムを集めるのに最適となっております。

・また、無人島エリア【アール・エグルス】にはイベントエリアが存在し、ゲーム内通貨G(ゴールド)を使った様々な催しを楽しむことができます。

今後とも、TAOをよろしくお願いします。

TAO開発運営チーム一同


「……はぁ、わざわざ見せんな。」


興味も無いと言った様子でゴロンと転がるグリーン。

普段の格好からすれば肌の露出が多く、その体の暴力的な魅力にセレブリーはゴクリと音を鳴らす。


「すげぇ体してんな、やっぱ。」


「ジロジロ見てんじゃねぇよ。」


「……いやいや、見るだろ普通。」


「はぁ……だりぃ。」


そんなやり取りを繰り返しながら、バカンスイベント終了までグリーンはほとんど動くことは無かった。

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