2-21:暗雲が希望を覆い隠していく

プレイヤー達は目の前に現れた二人に驚愕した。


「確かに、こないとは思っていました。……でも今更何のために出てきたって言うんです!?もうあとはそこのMPもない、大鎌も無いボスを倒せば僕たちの勝利という場面で!何をしに来たんです!」


ポラリスが叫ぶ。

これで終わりだと、もう終わったのだと。


「いやいや、何言ってんだよショタボーイ。アタシがここに来た。それだけで意味が分かるだろ?……まだまだこのイベントは終わらないんだってことくらいなぁ!」


グリーンは未だ、小雨を振らせ続ける空を指さして言った。


「天候操作は強力だが、継続消費するMPが重いんだよな?そしてそれを使ったのはあのノロマのロリっ子ちゃん。見せてやるよ本当の天候操作の使い方ってやつを!“邪教徒の征く道に光などない”!」


太陽が隠れていく。

黒く、重い雲が空を覆いつくしていく。

雨がやみ、この街に住むすべての生きとし生けるものがその心に影を落とす。


「いくぜぇぇぇぇぇぇ!“殺人衝動”!」


セレブリーがプレイヤーの集団に突撃していく。

それと同時にグリーンもまた走り出す。


「間に合ったぁぁぁぁ!俺も混ぜろやぁぁぁぁぁぁぁ!」


リスポーンしてきた戦闘狂のベガに対してグリーンが立ち向かう。


「“邪なる簒奪”!」


グリーンを黒い粒子が包み込む。


「その光はMPドレインだな!?喰らうかよそんなもん!」


ベガはいつも通りに回避したつもりだった。

体を逸らし、盾でのカウンターパンチを狙ったこの動きはこれまでゲーム内で何度も行ってきた自分の持てる、一番自信のある動きだった。


「ぐぅ……っ!……!?何をした⁉どうして躱せない?」


その動きをまるで読んでいるかのようにグリーンはベガの横に回り込み、そのスキルを叩き込んだのだった。


「ぐぁぁぁぁぁ!」


「イテェェェェェ!」


「なんでだよぉぉぉぉぉ!」


「チート野郎!ふざけんな!」


セレブリーが大量のプレイヤーをキルしているのがわかる。

被害者の声が戦場に怨嗟の如く響いていくからだ。


「“晴れの天気予報”!“雨の天気予報”!“雷の天気予報”!“強風の天気予報”!……どうして発動しないの!?MPは足りているはずなのに!」


アルタイルの悲痛な叫びが木霊する。

それに答えるかのようにグリーンは笑いながらベガに教える。


「天候操作ってのは対応した属性補正に応じて強化され、それより低い属性補正の天候操作を拒絶するんだ。アタシの闇属性補正は60。ロリっ子ちゃんはずいぶんたくさんの属性補正をもらったんだろうな?でも同じユニークジョブ同士、オールラウンダーがスペシャリストに勝てるわけねぇよなぁ?」


「まさか……この不調も……!」


グリーンはにやけながら答える。


「“暗雲”はAGI低下のデバフを与える。ステ振りできない数値を弄られるのはさぞつらいよなぁ?“邪なる簒奪”!」


そう言いながらベガから再びMPを回収するのだった。

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