2-11:アルタイルという少女

黄色いドレススーツの少女、ヴィーナ☆アルタイルは必死に走っていた。

同じグループのアリスト☆デネブはもうずいぶん先に行ってしまった。

自分の足の遅さに苛立ちすら覚える。


「こんな、ことなら、こんな、大きな、武器なんて!……選ばなきゃよかったぁ!」


配信のコメントは視界の右側に流れている。

たくさんのリスナーが応援してくれている。

アリスト君のファンが早く追いついてと懇願している。


「あぁ、もう!」


自分は占い師という設定の配信者だ。

イラストには大きな杖があったから、それと同じような杖を選んでもらった。

チュートリアルで何度も警告されながらもそれでも自分らしさだからと強行した結果、AGI低下のペナルティを受けた。


「戦闘だけなら、気にならないと、思ってたのにぃ!」


どうせ自分は戦闘中に走り回ったりするつもりはなかった。ヒーラーとかバッファーとかでいいと思っていた。


「こんなに走るなんて思ってないのに~!」


コメント欄に一見さんのコメントが。“武器しまえば?”


「あ、それだ!」


武器を消して走り出す。


「やった!これで追いつける!」


しかし疲れは確実に足を奪っていた。

もつれた足が絡まりズダーンと転ぶ。


「……まだまだぁ!」


道にたくさんの人間の死体が転がっている。

こんなことをしたのが本当に同じプレイヤーなのかと思うと胸が苦しくなる。

“その階段の先だよ!”というコメントが見える。


「着いたぁ……“バトル”。」


ふたたびずっしりとした重みを感じる。

この数段の階段が重い。

疲れてしまう、こんな状態で戦闘なんてできない。


「それでもぉ!ここまで来たんだから!」


階段を上りきると、そこには黒い粒子となって消えていくアリストの姿。

ニッコリとまるで聖母のような笑顔をこちらに向けるあの女性はもう、自分を見ている。

アリストがやられた相手に自分が勝てるとは思えないが、それでも戦わなければ。


「耐えることには自信があるんですからぁ!」


声を張り上げて戦う自信を手に入れる。

その意気込みを聞いたグリーンが驚いたように呟いた。


「……え?ロリっ子ちゃんもVIT極振りだったりするの?」

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