2-10:追撃戦は逃げる方が有利?
一当てして再び距離を取った後。
武器を構える緑と黄のドレススーツ。
それに相対するノースリーブとデニムのスキニー女。
まず初めに行動したのはスキニー女だった。
「悪いが相手をしてやる意味はねぇからな!」
ドレススーツの二人から逃げるように走り出した彼女は法衣を着た人間を探し始める。
「“投擲”」
刀を持った男、デネブは落ちていた石ころを投げたようだ。
石は“強打”同様鈍い光を放ちながらまっすぐにグリーンの背へと吸い込まれるようにして直撃する。
「ハッ!痛くも痒くもねぇなぁ?いいのかよ。このまま全員殺しちまうぞ!」
手頃な場所にいた人間に“強打”を打ち込んでは走り出すグリーン。
それを追うデネブの構図が出来上がった。
しかし何度デネブが妨害しようとグリーンは気にせず人間を倒していく。
「7……8……これで9!ってなぁ!」
「はぁ、はぁ……逃げるなぁ!」
とうとうデネブは己のティラーウェポンである刀を持って襲い掛かる。
それに対してグリーンはニヤリと笑って言葉を口にする。
「Aスロット2・アクティベート……これでアタシの勝ちだな?」
グリーンの体から黒い粒子が吹き荒ぶ。
軽く一撃をデネブに加えるも、デネブは理解できなかった。
目の前の女は恐らくVIT極振り。
こちらにダメージを入れるにはスキルを撃つ必要があるはずだ。
ならばSTRにかなり振っているポラリスと違い、INTもバランスよく上げている自分の与ダメージの方が高いと思っていたからだ。
「Aスロット1・アクティベート!」
“強打”が発動し、グリーンの杖による殴打がデネブを襲う。
チラ、とHPゲージを確認したデネブは驚愕した。
「MPが増えていない……?いや、それだけじゃない!?なんだこのダメージは!?」
なぜVIT極振りのグリーンがHPの2割ほどを今の“強打”で持っていったのか、そしてなぜMPが無いのか。
「……なかなか使えるぜ、この新スキル!」
邪教徒になったことで新たに覚えた二つと、今30人目の人間を倒したことで手に入れたスキル。
「こいつはどうかな……Aスロット3・アクティベート!」
「また何かするつもりか!?まずい!」
デネブはすでにMP切れとなっていることはわかっている。
スキル説明を見る限り、今の状態なら一番ダメージを期待できる新スキルを撃ちこんでこのPVPは終わりだ。
「そら、よ!」
黒く変色した左腕でデネブの顔を撫でるように触れると、デネブは顔を掻き毟るような仕草をし始めた。
「なんだ……かゆい……くそ、手が止まらん!くそ、何をした!」
「呪いだそうだぜ?MPを少しづつ減らすデバフで、MPがなければHPを削るらしい。」
デネブは己のHPバーを見る。
「“ポーション”!」
手の中に出現した赤い水の入った丸底フラスコ。
「お!いいもん持ってんじゃーん!」
現れた丸底フラスコをひったくってゴクリ、と飲み干すグリーン。
「なぁっ……!か、返せ……それがないと!」
デネブはガリガリと音がしそうな速度で減っていくHPに自身の敗北を悟ったのだった。
「ま、“狩人”なのに罠も使わない、弱点も狙わないような奴が強いわけねぇわな?」
黒い粒子になって消えていくデネブを見送りながら、足をがくがくと震わせながら必死に走ってきたであろう黄色のドレススーツに目を向けながら、グリーンは彼女にニッコリと笑みを見せたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます