1-6:全ての人間とティラーのために!
【中位権限NPCアーティよりユニークジョブクエスト“アイドルへの道”を提案されました。受諾しますか?】
目の前に浮かび上がったウィンドウに書かれたことを頭の中でもう一度読み上げる。
“中位権限NPCアーティ……ってことはやっぱりこのアイドルはNPCか……そしてユニークジョブ……最初のモブAはユニークジョブ初球錬金術師だったな……これってレアなのか?……しかし、あぁ、まぁ……。”
「いや、アイドルに興味はないかな。」
自分はスタイルには自信がある、しかし目の前のアーティのように愛想を振りまくようなことはできないだろう。
「えぇー!なんでぇ?アイドルはいいよ!傭兵団に入るってことはお金が欲しいんでしょ?アイドルいっぱい稼げるよ!お金持ちだよ!ちやほやしてもらえるよ!」
アーティは跳ねるようにステップを刻みながら畳みかけてくるもウストの太い腕に抱えられ引き下がっていった。
「グリーン!今度はアーティのライブでまた会おう!」
巨漢とアイドルのNPCが離れていったことで周囲の人混みも消え去っていった。
「こんなにNPCが居たのか……。」
辺りのテントの前に置かれた立て札もよく見えるようになった。
辺りのテントを見渡していくと一つの立て札の前で目がとまる。
“ハイデリオン傭兵団西都支部出張所”
「入ったらまたチュートリアルが始まるんだろうな……。」
“正直もう旅に出たいくらいなんだけどな……”
そんな風に頭の中でぼやきが産まれたその瞬間。その声が響いたのだった。
「ハッハッハッハ!」
ぶわ、と大きな風と共にグリーンの後ろに降り立った影はぐいっとその身を乗り出してきたのだった。
「アーッハッハッハッハッハ!ノーヴィスのお嬢さん!ハイデリオン傭兵団に用事だな!?つまり入団だな!中で話を聞こう!否、話をしよう!俺が一方的に話をしよう!」
男はこれまでのモブと同じ軍服に身を包んでいたが、何かが違う。違和感を感じる。
「あ、マントか。」
「ハッハッハ!俺のマントが気になるか!?そう、よく聞いてくれた!」
「いや、聞いてない聞いてない。さっさと話しを……。」
マントを手でばっさぁと翻し、男は堂々と叫んだ。」
「俺はハイデリオン傭兵団副団長、兼指導教官のシャンザンだ!ハイデリオン傭兵団の誇りとは力!ハイデリオン傭兵団の誓いは“全ての人間とティラーのために!”」
よく見てみれば周囲にはもうNPCもプレイヤーと思われる人影も消え去っていた。
イベントに入ったら消えるのだろうか、周りからは見えているのだろうか……。
「あぁ、さっさと話しを進めてくれ。」
シャンザンはその返答に顔をムッとしかめ、愚痴るように言った。
「……君もハイデリオン傭兵団の一員となるのなら続けてほしいのだがね……。」
NPCとわかっていてもそんな目を向けないでほしい。
「ハイデリオン傭兵団の誇りとは力!ハイデリオン傭兵団の誓いは“全ての人間とティラーのために!”」
わざわざ言い直したということは言ってほしいのだろうか。
「ハイデリオン傭兵団の誇りとは力!ハイデリオン傭兵団の誓いは“全ての人間とティラーのために!”」
やけくそだった。
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