1-3:戦闘セクションチュートリアル

「おい!起きろ!」


あぁ、またかという感覚を覚えながら目を覚ますと自分が倒れていることに気づく。

柔らかな草が肌を撫でる感触に、感動すら覚えるほどだった。

ぬかるんだ土の独特な匂いを感じながら身を起こすとそこには軍服のような印象を与えるキッチリとした服装に身を包んだ男が立っていた。


「あぁ?なんなんだ一体……?」


「やっと目が覚めたか!まだ産まれ立ての“ティラー”のようだし、うちの団の拠点までついてこい!」


軍服の男はこちらの疑問に答える気はないようでずんずんと先を進んでいく。


「なぁ。」


声をかけても反応がない。


「なぁってば!」


無理やり肩を掴んで声をかけると男はやれやれと言った様子で話し始めた。


「ダンジョンではたびたび生物が産まれる。総称として“ミュラー”と呼ぶが、その中でも人間の姿をしたものは“ティラー”と呼ぶんだ。ティラーは人間にもビスティアにもデスティアにもそこまで嫌われることなく暮らせるが、こんな世の中じゃ普通の職に就いても稼げねぇ。だから俺達“ハイデリオン傭兵団”はティラーを保護してティラー同士でパーティを組んでダンジョンを探索するのさ。」


知らない単語がたくさん出てきたが、ティラーというのが自分の種族でそのティラーの集団がハイデリオン傭兵団というのはわかった。


「ダンジョンにはミュラー……その中でも理性のない怪物ビスデスが大量に居る。しかし外では絶滅した薬になる木の実や草、掘りつくしてしまった鉱石なんかが採れるから実入りの良い仕事になるってわけだ。」


ゲームの設定を教えてくれているのか、それともこれも含めたチュートリアルなのか。

そんなことを考えていると男がいきなり立ち止まったのだった。


「どうせ傭兵団でしばらく稼ぐだろうからここで戦闘に慣れておくのも手だな。ちょうどいい、“バトル”って言ってみろ。」


「バトル!」


すると自分の手の中に半透明の水晶のようなものでできた杖が現れた。


「そいつがティラーウェポンってやつだ。それを出している間は俺たちティラーの身体能力が馬鹿みたいに高くなる。そんじゃ、次に前髪の辺りを見るように視線を動かしてみろ。」


そこには白い円形のものとそれを囲むように赤と青の線が見えた。

右半分が赤で左半分が青。そしてさらにその外側にはそれを囲むように台形のマスのようなものが見えた。


「さて、まずは赤いバーがHPを表している。これがなくなればお前は意識を失い安全な場所で目を覚ますことになる。だから探索中はこれの残りに気を付けろよ?」


男はその手の中に赤い水の入った丸底フラスコを産み出すと続けた。


「こうやってスキルを使うと減るのが左の青のバー、MPの残りを表している。MPは攻撃したり攻撃を受けたり、時間経過で回復するからいざって時にスキルを使えるようにちゃんと残しておくんだぞ。」


さらに男は丸底フラスコをこちらに手渡してくる。

受け取るとシステムウィンドウが出てきて少し驚いた。


【モブ兵士Aがユニークジョブ:初球錬金術師の”ポーション”スキルを教えてくれました。スロットにセットしますか?】


「”はい”を選べ。どうせノーヴィスならCスキルには何も入ってないはずだからな。」


はいを選ぶと先ほどの台形の部分に丸底フラスコのアイコンが刻まれたようだ。

更によく見れば台形は赤青緑の3色に分けられており、それぞれ一つずつマークがついていた。


「さて、これでノーヴィスのお前もAスロット、Pスロット、Cスロットに一つづつスキルが入ったはずだな。」


男はそう言うと道の奥を指で指し示した。

そこには中型犬ほどの大きさの狼が道を塞ぐように丸まっていた。

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